その他福岡10(廃棄物)

その他福岡10(廃棄物)

福岡地方裁判所/平成15年(わ)第1057号

主文
1 被告人B株式会社を罰金150万円に処する。
2 被告人Aを懲役1年6か月及び罰金100万円に処する。
被告人Aにおいてその罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間,同被告人を労役場に留置する。
被告人Aに対し,この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。
3 被告人Cを懲役1年に処する。
被告人Cに対し,この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
4 被告人Dを懲役1年に処する。
被告人Dに対し,この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
5 被告人Eを懲役8か月に処する。
被告人Eに対し,この裁判が確定した日から2年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 
被告人B株式会社(以下「被告人会社」という。)は,福岡市<以下略>に本店を置き,産業廃棄物の収集,運搬等を営むもの,被告人Aは,被告人会社の代表取締役として,その業務全般を統括管理するもの,被告人Cは,被告人会社の業務本部長として,同社の業務部及び営業部を統括管理するもの,被告人Dは,被告人会社の第一業務部部長として,産業廃棄物管理票等の整理を行うなどし,同部の業務体制を統括管理するもの,被告人Eは,被告人会社の業務課員(現場責任者)として,廃棄物収集運搬計画を立案し,廃棄物収集に際しては,現場作業を統括管理するものであったが,被告人会社を除く被告人らは,被告人会社の業務課員(班長)として,廃棄物収集に際して,作業現場において作業員を指揮する立場にあったF及び同Gと暗黙の内に意思を相通じ,被告人会社の業務に関し,
第1 平成14年6月29日,福岡市<以下略>所在の福岡市庁舎行政棟及び議会棟並びに同市<以下略>所在の福岡市庁舎北別館等から排出される一般廃棄物であるし尿を含む汚泥と産業廃棄物である汚泥をあえて混同して収集し,その混合物約16.86トンを,産業廃棄物を投棄できない同市<以下略>所在の福岡市中部中継所に搬入し,もって廃棄物をみだりに捨てた
第2 同年12月14日,前記福岡市庁舎行政棟及び議会棟並びに前記福岡市庁舎北別館等から排出される一般廃棄物であるし尿を含む汚泥と産業廃棄物である汚泥をあえて混同して収集し,その混合物約17.53トンを,産業廃棄物を投棄できない前記福岡市中部中継所に搬入し,もって廃棄物をみだりに捨てた
ものである。
(証拠の標目) 省略
(補足説明)
〈1〉事実認定に関する補足説明
第1 争点
1 被告人らの主張
 
被告人らは,いずれも被告人会社の現場作業員であった,被告人E(以下「被告人E」という。),F(以下「F」という。)及びG(以下「G」という。)らが,被告人会社の業務に関し,判示の福岡市庁舎行政棟,議会棟及び北別館等(以下「市庁舎」という。)の汚水槽から排出されるし尿を含む汚泥や汚水及びこれらの洗浄水が混合したもの(以下「し尿性汚泥等」という。)と、市庁舎の雑排水槽から排出されるし尿を含まない残滓物や排水及びこれらの洗浄水が混合したもの(以下「し尿外の残滓物等」という。)とを,あえて混同して収集し,一般廃棄物の処理施設である福岡市中部中継所(以下「中部中継所」という。)に搬入した事実(以下「本件混同行為」という。)は自認している。
 
しかし,各弁護人は,(1)上記し尿外の残滓物等は,水様のものであって,「汚泥」ではないから,そもそも廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」という。)で定められた「産業廃棄物」に該当せず,「一般廃棄物」に区分されるものであり,もとより一般廃棄物たるし尿性汚泥等と,同じく一般廃棄物にあたるし尿外の残滓物等を混同させたものを,産業廃棄物を投棄できない中部中継所に投棄しても,何ら違法行為にはあたらず,被告人らは無罪であると主張する。 
 
また,被告人A(以下「被告人A」という。),同C(以下「被告人C」という。)及び同D(以下「被告人D」という。)は,当該作業現場には立ち会っていないところ,その弁護人らは,同被告人らには,現場作業員らとの間で,本件混同行為に関する共謀の事実はなかったから,いずれの被告人も無罪であると主張し,同被告人らも,公判廷において,現場作業員らによるかかる行為は知らなかった旨,弁護人の主張に沿うような供述をする。同被告人らの共謀の有無に関しては,検察官もまた,同被告人らが現場作業員らに対し,本件混同行為を行うよう直接的な指示ないし命令をした旨主張するものではないから,ここでは,同被告人らが,被告人Eら現場作業員らによって,本件混同行為がなされていることを知りつつ,これをあえて放置したことで,暗に意を通じて共謀したと認められるかどうかが問題となる。
 
したがって,事実認定に関する本件の争点は,(1)し尿外の残滓物等が,汚泥であるか否か,(2)被告人A,同C及び同Dについて,同被告人らが,現場作業員らによる本件混同行為の事実をあらかじめ知って放置していたか否かである。
2 本件の証拠構造
 
争点(1)については,し尿外の残滓物等の形状,性質等を示す証拠(市庁舎の雑排水槽内の滞留物等に関する検証調書,その具体的な収集方法に関する供述等)を総合して,それが汚泥であるか否かを認定することになる。
 
また争点(2)については,被告人C,同Dに関する限り,同被告人らが,現場作業員らによる本件混同行為を知っていたとする直接証拠として,同被告人らの捜査段階の供述があり,これを否定する直接証拠として,同被告人らの各公判供述があるので,同被告人らの認識内容を推認し得る間接事実を検討すると共に,これと照らし合わせて,各供述の信用性を判断する。一方,被告人Aについては,同被告人が,現場作業員らによる本件混同行為を知悉していたことを自認した直接証拠があるとはいえないから(なお,検察官は,被告人Aの平成15年8月1日付け検察官調書〔乙14〕及び同日付け警察官調書〔乙3〕が,その点の直接証拠にあたると主張するが,これらの調書はその文面そのものからして,被告人Aが,必ずしも事前に本件混同行為を知っていたことを認めた調書であると解することはできない。),同被告人の認識内容を推認し得る間接事実をもって,その認識の有無を判断することとなる。
 
なお,以下,年月日については,特に記載しない限り平成14年を意味するものとする。第2 前提事実
 
関係各証拠によれば,以下の事実を認定することができる。
1 当事者の関係,経歴等
 
被告人会社は,産業廃棄物の収集運搬については福岡県知事の許可を,また一般廃棄物の収集運搬については福岡市長の許可を得るなどして,これらの事業を営む会社であり,その第1業務部が,実際に汚水槽,雑排水槽からの廃棄物の収集運搬という業務を担当している部署である(甲6)。
 
本件混同行為当時における,各被告人の役職や担当業務は判示のとおりであり(乙7,33,49,68),被告人A,同C及び同Dは,被告人会社の幹部として,作業現場に出ることはなかった。
 
もっとも,被告人Dは,昭和53年ころ被告人会社に入社して第1業務部に配属され,平成元年ころに約1年間離職していた期間を除き,平成7,8年ころ業務課長に就任するまでの間,一貫して第1業務部の部員として,現場作業に従事していた(乙39,46,51)。
 
また,被告人Eは,平成元年ころ被告人会社に入社し,当初は廃棄物の収集運搬とは異なる現業部署に所属していたものの,平成10年10月ころに第1業務部に配置替えとなり,以後廃棄物の収集運搬の現場で稼働していた。
 
他方,被告人Cは,昭和62年ころ被告人会社に入社したが,当初は廃棄物の収集運搬とは異なる現業部署に所属し,平成6年ころからは営業を担当するようになり,平成9年には取締役に就任するなどして,現場の作業には従事しなくなった。
 
また,被告人Aは,もともと被告人会社の前身を起業したのが同被告人の実父であり,加えて先代の社長は同被告人の妹婿であった関係もあって,平成6年に副社長として迎えられて同社に入社したものであり,廃棄物収集運搬の現場作業要員として稼働したことはない。
2 被告人会社と福岡市間の業務委託契約の内容
(1)業務委託契約の概要
 
被告人会社は,平成14年6月6日,福岡市との間で,同年6月と12月の2回にわたり,市庁舎の汚水槽,雑排水槽の清掃と,各槽から排出される廃棄物の収集運搬の業務(以下「本件業務」という。)を有料で請け負う委託契約を締結した(甲11添付の資料9)。本件混同行為は,同契約に基づいて,市庁舎の汚水槽及び雑排水槽から実際に廃棄物を収集運搬するに際して,行われたものである。
 
本件業務委託契約の対象となった汚水槽,雑排水槽の詳細は以下のとおりで,その数は雑排水槽が18箇所,汚水槽が7箇所の合計25箇所である(甲12)。
本庁舎 行政棟   雑排水槽 3箇所 汚水槽2箇所
    
議会棟            汚水槽1箇所
    
地下駐車場 雑排水槽11箇所 汚水槽2箇所
広場便所               汚水槽1箇所
地下通路      雑排水槽 1箇所
北別館       雑排水槽 3箇所 汚水槽1箇所
 
市庁舎にある雑排水槽は,各種洗面所,流し台,シャワー室,厨房,雨水や洗車のための排水溝などからの排水のみが流れ込む槽であって,構造上し尿が混入する余地はないものであり,市庁舎にある汚水槽は,構造上そのほとんど,即ち広場便所の汚水槽1箇所を除くその余の全てが各種水洗トイレからのし尿を含む汚水だけが流れ込む槽であり,これら雑排水槽,汚水槽の多くには,溜まった排水又は汚水等をいずれも下水道管に送り出すためのポンプアップ装置が設置されている。本件業務は,ポンプアップ装置が設置されていない雑排水槽内の排水や,ポンプアップ装置がある雑排水槽又は汚水槽内のポンプアップしきれない残りの汚水,排水,そして各槽内に溜まった残滓物を吸引し,各槽内を清掃してから洗浄用の排水も吸引した上,消毒する一方,こうして収集したし尿性汚泥等及びし尿外の残滓物等を,いずれも廃掃法に適合する方法をもって処理施設まで運搬することをその概要とするものであった。
(2)各槽からの収集廃棄物の運搬先に関する取り決め等
 
ところで,地方公共団体たる福岡市は,廃掃法上の「事業者」にあたり,その事業活動に伴って生じた「汚泥」については,廃掃法(2条4項1号)上「産業廃棄物」に区分されているので,雑排水槽から収集されるし尿外の残滓物等は,それが「汚泥」であれば,「産業廃棄物」に該当するものであった。ちなみに,廃掃法(12条3項等)上,産業廃棄物については,事業者がその処分を第三者に委託する際には,その委託先は,同法に基づく都道府県知事の許可を得た産業廃棄物の処分業者に委託しなければならないものと定められている。
 
そして,本件業務委託契約上は,市庁舎の雑排水槽から収集されるし尿外の残滓物等は,その全体が産業廃棄物たる「汚泥」と呼称され,そのように扱われており,被告人会社は,これを収集した後は,産業廃棄物処分業者としての許可を受けた株式会社Hが管理する産業廃棄物処理施設(福岡県筑紫野市所在。以下単に「H」という。)まで運搬し,搬入することが合意されていた。なお,Hにおける処分費用は有料であり,福岡市がこれを負担することとされているが,被告人会社は,その処分費用代を含めた料金として福岡市から業務委託料を受け取っており,Hに対する処分費用の直接の支払いは,福岡市ではなく,被告人会社がその責任をもって行うこととなっていた。
 
一方,事業者の事業活動によって排出された汚泥の中でも,「し尿が含まれる汚泥」に限っては,通達により「一般廃棄物」と解されていることから,市庁舎の汚水槽から収集されるし尿性汚泥等は,一般廃棄物として扱われており,その運搬先は,中部中継所とする旨定められていた。中部中継所は,福岡市が設営するし尿等の中間処理施設であって,一般廃棄物たるし尿,し尿浄化槽の汚泥,その他し尿を含む汚泥(市庁舎の汚水槽のように,ビル内に設置された汚水槽〔ビルピット〕からのし尿を含む汚泥等)のみを受入れ,夾雑物(きょうざつぶつ)を除去した後に,公共下水道の終末処理施設であり福岡市におけるし尿の最終処理施設でもある中部水処理センターに圧送し,除去した夾雑物の方は脱水処理後に袋詰めにして福岡市のゴミ処理施設に陸送するという処理を行うことを予定している施設であって,産業廃棄物たる汚泥の搬入は予定されていない。なお,中部中継所に搬入される廃棄物については,その処分費用は無料であった。
(3)本件業務委託契約上の廃棄物の収集予定量
 
本件業務の委託契約締結に先立って,被告人会社は,福岡市が作成した「仕様書」(甲11添付の資料1)を受領しており,これによれば,被告人会社が収集すべき「汚泥」の数量として,雑排水槽から収集されるべき「汚泥」は合計13.61立方メートル,汚水槽から収集されるべき「汚泥」は5.5立方メートルの,総計19.11立方メートルと記載されていた。
 
もっとも,仕様書に記載された収集量は,各廃棄物の実際の排出量を測定するなどして算出されたものではなく,各槽の構造に基づいて計算された排出予定量を,「設計数量」と称して記載していたもので,従前から同じ数量を記載することが慣行とされていた(甲11)。
 
なお,し尿外の残滓物等やし尿性汚泥等の比重は1と考えられており,概ね1000リットル=1立方メートル=1トンと考えられているのであって,この点に関して特段の争いはないところである(甲13,38参照)。
3 産業廃棄物処理における法定のマニフェスト(産業廃棄物管理票)制度
 
一般に,産業廃棄物を収集運搬処分するについては,不適正処理防止の観点から,平成10年12月より,「マニフェスト」と呼ばれる用紙を利用して,産業廃棄物の排出から最終処分までの経過を明らかとする制度が全面的に義務付けられている。
 
すなわち,「マニフェスト」は,複数枚が複写式となっている用紙に,収集運搬業者名,処分業者名,廃棄物の種類,数量等を書き込んだものであり,産業廃棄物を排出した事業者,収集運搬業者,処分業者は,産業廃棄物の受け渡しに際して,「マニフェスト」の一枚ずつを取って保管する。これによって処理に必要な情報が伝達できるとともに,処理の記録がそれぞれに残ることになり,処理終了後には,排出事業者が処分業者からその旨記載した「マニフェスト」の写しの交付を受けることで,委託内容どおりに産業廃棄物が処理されたことを確認し,適正な処理を確保することができるようにしている。かかる制度の下では,収集運搬業者が排出事業者から委託を受けた産業廃棄物につき「マニフェスト」に記載した種類や数量と,実際に処分場に持ち込まれ,処分された産業廃棄物の種類や数量が異なっている場合には,その産業廃棄物を処分場に運び込んだ収集運搬業者が責任を問われることになる(甲11添付資料9,10)。
 
市庁舎の雑排水槽から収集されるし尿外の残滓物等を運搬するにあたっても,遅くとも平成11年度より,かかるマニフェスト制度が適用されていた。もっとも,そこに記載された廃棄物の数量としては,実際の排出量ではなく,排出予定量に過ぎない上記「設計数量」に基づいて,これとほぼ同一の数量が記載される扱いとなっていた(甲11,乙54)

 
そして,本件業務における産業廃棄物用のマニフェストにも,その数量は,6月29日収集分の「汚泥」が合計13610リットルと,また12月14日収集分の「汚泥」が合計14000リットルと記載され,「設計数量」たる13.61立方メートルと,ほぼ同量の数値となっていた(甲11)。
4 本件業務における本件混同行為とその前後の経過等
(1)本件業務については,被告人Cが,営業の責任者として,福岡市から交付された「仕様書」を把握した上,担当者との事前の打合せを行った(乙33,41)。
(2)被告人Cは,具体的な作業日時や作業場所などを記載した「作業指示票」を自ら作成し,これに「仕様書」や作業現場の図面等を添付した上で,第1業務部部長である被告人Dに交付した(乙33,41)。
(3)各作業日当日の配車の手配は,主として被告人Eが行い,その際,専らし尿外の残滓物等の収集運搬を行う産業廃棄物収集運搬車(以下「雑廃車」という。)については,10トン車1台,4トン車1台,2トン車2台を,専らし尿性汚泥等の収集運搬を行う一般廃棄物収集運搬車(以下「汚水車」という。)については,10トン車2台,4トン車1台,2トン車1台を,それぞれ手配したが,少なくとも,各作業日当日までには,被告人Cも同Dも,その配車予定を把握していた(甲81,乙76,104,E供述第3回78項以下等)。
(4)6月29日及び12月14日には,被告人Eその他の現場作業員が,本件業務に関する具体的な作業を行い,その際には,例えば,市庁舎1階駐車場のタクシー乗り場辺りに駐車した10トンの汚水車を使用して,議会棟の汚水槽1箇所と,地下2階駐車場の雑排水槽2箇所から,中に溜まっていたし尿外の残滓物等とし尿性の汚泥等をそれぞれホースで吸い取り,いずれも汚水車に積み込んで,あえてこれらを混同して収集するなどして,本件混同行為を行った(乙104等,なお,そうして混同して収集された廃棄物を,以下「混合物」という。)。
(5)被告人Eらは,各作業日の当日中に,10トンの汚水車2台に,収集した混合物を積載して中部中継所に出向き,各混合物を搬入した。
 
なお,中部中継所では,廃棄物の搬入前後の収集車の重量を測ることで,搬入された廃棄物の量を測定しており,廃棄物搬入後には,その日時,搬入量等が,「投入カード」と称しているレシート上に自動的に印字され,これが搬入業者にも交付される扱いとなっている。
 
被告人Eらによって中部中継所に搬入された混合物の実数量は,6月29日分が2台で合計16.86トン(乙81添付の資料2),本件12月14日分が2台で合計17.53トンであって(乙87添付),前示のとおり,市庁舎の汚水槽から収集されるべき「汚泥」の「設計数量」5.5立方メートルからすれば,3倍以上の混合物が中部中継所に搬入されたものであった。(甲50,51)。
(6)他方,当日中に中部中継所に搬入できなかった廃棄物は,これをそのまま10トンの雑廃車に積み込むなどして,現場作業員によって被告人会社まで持ち帰られた。その正確な実数量は必ずしも明らかではない。
 
しかし,7月1日には,市庁舎から雑廃車で運び出された廃棄物と,「鮮魚市場」と呼ばれる他の作業場所から産業廃棄物として運び出された廃棄物とを,同時に合わせてHまで運搬,搬入しているところ,その際には,市庁舎分(13.61立方メートル)と鮮魚市場分(17立方メートル)とを合わせて,マニフェスト上は合計30.61立方メートルの産業廃棄物を運搬,搬入しなければならないはずであるのに,実際には10トン雑廃車2台でしかHに出向いていないことから,その実数量は,最大でも20トン分に過ぎなかったことが認められるし,12月16日にも市庁舎から雑廃車で運び出された廃棄物をHまで運搬,搬入しているところ,その際には,マニフェスト上の数量14立方メートルの産業廃棄物を運搬,搬入しなければならないはずであるのに,実際には10トン雑廃車1台でしかHに出向いていないことから,その実数量は,最大でも10トン分に過ぎなかったことが認められ(乙61の添付書面),結局本件業務において,Hに搬入された廃棄物の実数量は,市庁舎の雑排水槽から収集されるべき「汚泥」の「設計数量」及び「マニフェスト」上の記載と比較して,相当程度少ないものであったということができる。
 
なお,被告人Eは,公判廷においては,7月1日にHに出向いた時には,10トン車2台ではなく,10トン車3台で廃棄物を運搬した旨供述するのであるが(第3回E供述589項以下),Hで受け付けられた3通の産業廃棄物処理委託書(乙84添付書類)のうち,同一の車両番号(××―××)が記載された2通の受付時間が9時35分と9時38分となっていて,同委託書のうち1通は実体のないものであったことが推認されることや,Hの担当者が記録したと解される出入管理表(乙72添付書類)でも,同日分の午前中には,午前9時26分入場,10時23分退場で××―××,××―××の2台しか被告人会社の車両が入場したとする記載はないこと,被告人Eも,その捜査段階ではHに出向いたのは10トントラック2台であったが,マニフェスト上合計30.61立方メートルの廃棄物を全部運搬したことを装うには,車両3台で行ったことにしなければ不自然だと思ったために3通の産業廃棄物処理委託書を作成した旨述べていること(乙84)に照らせば,同被告人の前記公判供述は到底信用することができず,実際にHに出向いた雑廃車は10トン車2台であったと認めることができる。
 
なお,被告人会社では,遠方にあり,運搬するのに1時間はかかるHに廃棄物を持ち込むにあたっては,効率性を考え,複数の作業現場から収集した廃棄物を10トン雑廃車に積み替えるなどし,これがほぼ満杯となるのを待って出向くようにしており,被告人会社で現に保管中の廃棄物量を正確に把握するために,被告人会社内に設置された「ホワイトボード」に,雑廃車に貯留されている廃棄物の実数量を記載する扱いとしていた(乙45,A供述第12回86項)。
(7)さらに,中部中継所に搬入した廃棄物の実数量が印字された「投入カード」や,産業廃棄物の「設計数量」に近い数量が記載されている「マニフェスト」は,いずれも被告人Dに提出され,同被告人はいずれもその内容を確認していた(乙48,54)。
(8)被告人Dは,被告人会社に持ち帰られた廃棄物の保管量が相当程度溜まった段階で,現場作業員らに対し,これをHへ搬入しに行くよう指示する一方で,Hの産業廃棄物処理担当責任者であるIに電話連絡を入れ,搬入する廃棄物の実数量が,「マニフェスト」の記載量とは齟齬があることを伝えた上で,Hが,「マニフェスト」の記載どおりに産業廃棄物を受け入れた扱いにしてくれるよう依頼した(甲7,57ないし59)。その結果,前記のとおり,Hに持ち込む廃棄物の実数量は,「マニフェスト」の記載量と比較して著しく少ないにもかかわらず,被告人会社は,Hに対して,「マニフェスト」記載の数量に基づいて処分料金を支払っていた。
5 被告人会社における本件業務以外の混同収集行為
 
被告人会社は,少なくとも昭和60年から平成14年まで毎年,福岡市との間で,本件業務と同様の,汚水槽や雑排水槽の清掃及び廃棄物の収集運搬を行う業務を請け負っており,平成4年に福岡市が現市庁舎を落成して以降は,本件業務とほぼ同一の配置及び数の汚水槽,雑排水槽を対象として,同業務をこなしていた。
 
そして,被告人会社においては,本件業務に限らず,古くは昭和53年ころから,複数の現場において,本件混同行為と同様に,汚水槽からのし尿性汚泥等と雑排水槽からのし尿外の残滓物等を故意に混同して収集すること(以下「混同収集行為」という。)を行っていた。昭和54年ころにかかる行為等が摘発されて被告人会社が営業停止処分を受けた後は,しばらくし尿性汚泥等とし尿外の残滓物等とを分別して収集していたものの,やがて再び混同収集行為が行われるようになり,市庁舎における収集業務でも,少なくとも新庁舎が建てられた平成4年以降,本件混同行為と概ね同様の手順によって,例年混同収集行為が行われてきたものであった。
 
なお,この点につき,被告人Eや同Dは,公判廷において,市庁舎における収集業務は平成11年ころ以降混同収集行為をしていた事実があることは認めるものの,その他の現場においては,混同収集行為はほとんどなかったとか,あるいは混同収集行為をすることがあっても,些細な量であったかのように供述するところであるが(第3回E供述29項以下,第4回D供述20項以下),被告人会社が,昭和53年といった古い時代から,一時の中断を挟んで様々な場所で混同収集行為を行い,特に市庁舎においては,少なくとも平成4年以降,混同収集行為を行ってきたという事実は,被告人会社に長期間勤務し,既に退職した元従業員たるJ(甲81),K(甲83),L(甲85)ら複数人に加えて,被告人D自身もその捜査段階の供述で認めているところである。また,平成10年から13年といった近年に,市庁舎で,あるいは市庁舎を含めた複数の場所で,混同収集行為をしていた事実は,分離前相被告人であったF(乙94),G(乙99)を始め,M(甲63,65),N(甲67),O(甲69,71),P(甲73),Q(甲74,76)といった多数の従業員が口をそろえて同じことを述べているのであり,もちろん被告人Eも捜査段階では明確にこれを認めていたほか,被告人Cもその事実を自認するところであった。さらに,公判廷での被告人E自身,平成11年に市庁舎での混同収集行為を行った理由は,先輩もそのような方法を採っていたからであり,それが違法行為だとはっきり認識したのは警察に捕まってからである等と述べていること(第4回E供述149項以下)に照らせば,被告人会社の現場作業員にとって,混同収集行為は,まさしく日常的に,当たり前のように行われることと認識されていたことが認められるのである。
 
かかる事実に照らせば,被告人会社においては,長年の慣行として,多くの現場で常習的に混同収集行為をしていたことが,明らかに認められるところである。
第3 争点(1)(し尿外の残滓物等は「汚泥」か否か)について
 
証拠(甲16ないし18,20)によれば,平成15年2月14日に行われた検証の結果,市庁舎内の各雑排水槽には,設置されたポンプアップ装置を最大限に作動させても,底から揚Gまでの5センチメートルから10センチメートル位の高さの廃棄物は,ポンプアップしきれずに槽内に残ること,そこでこれらを汲み上げて検分すると,いずれの槽からも,排水中に,主として黒っぽい色(一部の槽からは茶色)をした沈殿物が滞留していることが認められ,これらは,一見して相当量の水分を含んでいると見られるものの,明らかに泥状のものであるから,少なくとも,この泥状の残滓物は,「汚泥」であると認められ,それは廃掃法2条4項1号が定める産業廃棄物にあたると解される。
 
そして,6月29日と12月14日にも,市庁舎の雑排水槽内には,前同様の形状の「汚泥」が堆積していたことが推認されるから,本件混同行為に際して,被告人Eら被告人会社の現場作業員が、し尿外の残滓物,すなわち産業廃棄物たる汚泥を,一般廃棄物たるし尿性汚泥等と,あえて混同して収集したことは,優に認められるというべきである。
 
各弁護人は,雑排水槽内のかかる沈殿物とは異なり,単にその上部に位置する水様のものを指して,泥状でないと指摘し,これを根拠に槽内の廃棄物が「汚泥」でないと主張するに過ぎず,その主張は失当というほかない。(なお,確かに,雑排水槽の底に沈殿している「汚泥」は,これを収集運搬するにあたって,その上部に滞留している排水や,雑排水槽を清掃する際に用いられる洗浄水とは,分離することが事実上不可能というべき状況にあるが,このように必然的に汚泥と一体のものとして扱わざるを得ない水分については,たとえその全体を指して「汚泥」にあたるということができないとしても,その収集運搬及び最終処分の方法においては,「汚泥」に準じて扱うものとして支障はないし,前示のとおり,本件業務委託契約についても,市庁舎の雑排水槽から収集すべきし尿外の残滓物,排水及び洗浄水は,これらを一体として「汚泥」扱いとして,産業廃棄物処理施設への搬入を予定していたところである。)
第4 争点(2)のうち,被告人Dの認識について
1 間接事実からの推認
(1)本件混同行為を知悉していたことを基礎付ける事実
ア 被告人会社における従前の混同収集行為を知っていたこと
 
前示のとおり,被告人会社は,本件業務以前にも,日常的に多くの場所で混同収集行為を行い,特に市庁舎では,平成4年以降概ね本件業務と同様の手順で混同収集行為を行っていたところ,被告人Dは,平成7,8年ころに第1業務部の課長となる以前は,まさに同部の部員として,廃棄物収集運搬の現場で稼動していたのであるから,従前の被告人会社が,本件業務以前にも市庁舎で混同収集行為を行っていたことは,十分に認識していたものと認められる。(なお,この点については,被告人D自身も,捜査段階供述では明確に自認していたものである。)。 
イ 本件業務によってHに搬入した廃棄物の実数量は,マニフェストの記載量を相当程度下回るものであることを知った上で,当該事実の隠蔽を図るような言動をしたこと
 
被告人Dは,本件業務当時,被告人会社の第1業務部部長として,「マニフェスト」を管理する責任者の立場にあり,「マニフェスト」記載の数量を確認することは勿論,Hへ持ち込む廃棄物の実数量がこれに見合うものであることについては,きちんと確認すべき立場にあるといえる。しかも証拠によれば,被告人会社の事務所内には,「ホワイトボード」が設置され,このボードには常に,雑廃車で収集したまま現在会社内で保管中の廃棄物の実数量がどれだけあるかを記載するようになっていたことが認められるから,その記載を確認し,「マニフェスト」と照合するなどして,その実数量を把握することは容易であり,かつ,確認しなければならない立場にあった。被告人Dが,かかる自己の責務を果たしておれば,その実数量が「マニフェスト」に満たないものであることは当然認識できたはずである。
 
さらに,証拠(甲7,57ないし59)によれば,被告人Dは,現場作業員らがHに廃棄物を搬入しに行くに先立ち,Hの産業廃棄物処理責任者であるIに対して電話連絡を入れ,被告人会社が搬入する廃棄物は,「マニフェスト」の記載量より少ないものとなっていることを伝えた上で,なおHが「マニフェスト」どおりに廃棄物を受け入れたように装うことを求める依頼をしたことが認められる。
 
かかる事情は,まさしく被告人Dが,市庁舎の雑排水槽から収集運搬されるはずの産業廃棄物の実数量が,「マニフェスト」の記載量より相当程度下回るものである事実を知っており,かつそれにもかかわらず,当該事実の隠蔽を図るような言動をしたものと指摘することができる。
ウ 本件業務によって中部中継所に搬入した混合物の実数量は,一般廃棄物の設計数量を大きく超えるものであることを知っていたこと
 
前示のとおり,被告人Eらは,中部中継所に対して,6月29日には合計16.86トンの,12月14日には合計17.53トンの混合物をそれぞれ搬入しているところ,証拠によれば,被告人Dは,その実測量が印字された「投入カード」の提出を受けていたことが認められるから,その実数量を把握していたと推認できるし,現に,被告人D自身,従前から,14ないし15トン位の量の廃棄物を中部中継所に搬入することになるであろうことは,分かっていた旨自認しているところである(第4回D供述126,136項)。
 
他方で,被告人Dは,その搬入される廃棄物の実数量が,設計数量を大幅に超えるものであることは知らなかった旨供述する(第4回D供述133項)が,証拠によれば,同被告人は,本件業務実施に先立って,合計が5.50という「設計数量」も明記されている「仕様書」が添付された「作業指示票」を,被告人Cから受領していたものであるし,特に12月14日の本件業務実施前に受領した市庁舎汚水槽清掃に関する「作業指示票」(乙104添付書類)には,被告人Cによって,各施設毎の一般廃棄物の「設計数量」が記載され,その総数量として「トータル汚水5.5立方メートル以上くみ取りして下さい。」等という記述もなされていたことを考えると,被告人Dは,「設計数量」についても十分これを認識していたとみることができる。
 
とすれば,結局被告人Dは,本件業務によって中部中継所に搬入された廃棄物の実数量が,その設計数量を大きく超えるものであることは当然承知していたものと認められる。

(2)上記間接事実の評価
 
以上のとおり,被告人Dは,そもそも被告人会社が,市庁舎を含む複数の現場で,かねて混同収集行為を行っていた事実を知っていたものである上,本件業務においては,当初の予定排出量たる「設計数量」と比較すると,中部中継所に搬入する廃棄物の実数量は3倍以上も増加しているのに対し,Hに搬入する廃棄物の実数量は相当程度減少していたことも十分認識していたのであり,にもかかわらず,Hに対しては,産業廃棄物を「マニフェスト」の記載どおりに受け入れた扱いにするよう依頼して,積極的にかかる食い違いを是認し,取り繕う行動に出ているのである。証拠によれば,Hに対する処分費用は,契約上,1立方メートルあたりの単価をもって定められ,搬入量に応じて増減する約定となっていたことから,実数量が遥かに少ないにもかかわらず,「マニフェスト」どおりの数量を搬入したように扱うことは,被告人会社が,契約上は支払う必要のない処分費用を余計に負担することとなる。被告人Dも,かかる不利益については当然理解し得たはずであるが,それをも顧みず,搬入した実数量が「マニフェスト」より少ないことを隠蔽しようとしたのであるから,その理由は,実数量が少なくなった原因が,違法・不当なものに起因することを知っていたからであると考えざるを得ない。
 
とすれば,かかる間接事実に照らしても,被告人Dは,現場作業員らが本件業務に関し,本件混同行為を行うであろうことを認識し,かつこれを認容していたことを十分推認することができる。
2 捜査段階供述の信用性
 
さらに,被告人Dは,捜査の当初は,現場作業員らが意図的に本件混同行為を行っていることは知らなかったとの供述をしていたものの,平成15年7月17日に判示第2の容疑で逮捕され,同月22日に至って初めて,「平成7年以前ころまでBの一作業員として現場で働いていたが,入社したときから,本件市庁舎を含む多くの現場で,し尿と汚泥とを混同して,中部中継所に捨てるという違法行為を続けていたので,私自身,今回,市庁舎でも同じように違法行為をしていたことは分かっていた」旨を供述した(乙44,59)。以後,同様の供述を維持するとともに(乙46:同月25日付),被告人Dが,本件混同行為を認識していた根拠として,本件業務のために準備した雑廃車と汚水車の各台数とその内訳は,「設計数量」で示された産業廃棄物と一般廃棄物の比率とは食い違うような配車となっており,被告人Dもこれを知って放任していたことを認め(乙47:同月26日付),また,「マニフェスト」の管理責任者として,「マニフェスト」上の産業廃棄物の数量を把握するとともに,前記「ホワイトボード」の記載からその実数量をも把握しており,両者に不一致があることも当然分かっていて,この不一致を調整するために,HのIに書類上の操作をお願いしていた旨を供述し(乙61:同年8月1日付,乙58:同月5日付),さらには,「設計数量」によって市庁舎から排出される各廃棄物の大凡の量は把握しており,一般廃棄物につき,中部中継所に投入された実数量が「設計数量」に記載された数量と食い違うことから,本件混同行為が行われたことは間違いない旨を供述した(乙58)。
 
このような被告人Dの捜査段階における供述は,外形的・客観的事情に基づく根拠を挙げた上で,本件混同行為を認識・認容していたことを認める内容であり,動かしがたい外形的な経緯によく整合していて,極めて高い信用性を有するということができる。
3 公判供述の検討
 
これに対して,被告人Dは,公判廷においては,本件混同行為に対する自らの認識を否定した上,市庁舎も含めて,被告人D自身が現場作業員として参加した現場において,違法な混同行為が行われたことはなかったし,そのようなことをしていると聞いたこともないこと,市庁舎から排出される一般廃棄物に関しては,先輩から大体14ないし15トン取れると聞いて,そのように考えていたから,10トンの汚水車2台という配車を不自然とは思わなかったこと,「仕様書」は今回の件で逮捕されるまで見たことがなかったから,「設計数量」は知らなかったことなどを供述する。
 
しかしながら,かかる供述は,前示の外形的事実と多くの点で相矛盾するものである上,自らが,何故にHの担当者に対して,事実に反して「マニフェスト」の記載どおりに産業廃棄物を受け入れた扱いにするよう依頼したかその理由について,何ら説明ができていないところであるから(D供述第5回87項以下参照),たやすく信用することができない。
4 結論
 
以上のとおりの間接事実からの推認と,これに符合し信用性の高い被告人Dの捜査段階における供述によれば,被告人Dは,現場作業員らが,本件業務に際して,本件混同行為を行うであろうことを予め認識しながら,これを認容し,被告人Eらにかかる行為をしないよう要求することもなく,あえてこれを放置したことを,優に認定することができる。
第5 争点(2)のうち,被告人Cの認識について
1 捜査段階の自白供述の内容と経過
 
被告人Cは,捜査段階の当初は,本件混同行為については知らなかったと供述していたものの,平成15年6月25日に判示第1の事実を容疑として逮捕された後,同年7月5日には,警察官に対して,本件混同行為につき,認識・認容していたことを認める旨の供述をした(乙22)。その後も,被告人Cは,一貫してかかる供述を維持し,同月6日には,検察官に対しても,廃棄物の収集運搬事業を取り巻く様々な状況から,被告人会社においては薄利多売の経営方針をとらざるを得ず,そのため作業の効率化を図る必要があったことなどから,大規模な現場においては混同行為を行っているのは知っていたが,容認していた旨を供述し(乙28),さらに,市庁舎の槽の数及び汚泥の量からしても,一般廃棄物であるし尿性汚泥等と比較して,産業廃棄物であるし尿外の残滓物等が約2.5倍あり,適切に分別収集して積み込むためには汚水車よりも雑廃車の方が割合的には多く用いる必要があったが,実際には,汚水車2台,雑廃車1台という配車を行ったのであり,このような車両配置にすれば,廃棄物を分別した適切な収集を行うことは困難であることは分かっていたこと(乙29:同月8日付),薄利ではあっても利益の確保を求めて,他の現場では産業廃棄物である汚泥と一般廃棄物であるし尿を混ぜているのが分かっていたので,現場責任者のEに,市庁舎の現場は適切に分別収集しろという指示はできず,仮に適切に分別収集しろと指示すれば,効率的な作業ができずに1日で終わらせることができず,翌日以降の作業にも影響が出ると考えていたこと(乙23:同月9日付),被告人会社では,1日の作業現場数が多いときや,担当する作業現場の槽の数が多い場合には,作業効率をあげるために,一般廃棄物であるし尿性汚泥と産業廃棄物であるし尿外の残滓物等を意図的に混入しているという事実を知っており,このような混同収集行為は,最近始まったことではなく,平成12年ころ,被告人Cが業務本部長となった以前から行われてきたこと(乙27:同月25日付,乙36:同年8月3日付)などを供述した。
2 自白供述の信用性
(1)本件混同行為を知悉していたことを疑わせる事実との整合性
 
被告人Cには,同被告人が現場作業員らによる本件混同行為を知っていたことを疑わせるだけの事情が認められるところ,前記自白供述の内容は,かかる事情を十分合理的に説明するものとなっている
ア 廃棄物の「設計数量」と実数量の齟齬を知りながら放置したこと
 
被告人Cは,福岡市から受領した「仕様書」等記載の「設計数量」の数値を十分把握していた一方,中部中継所に投入したし尿性汚泥等の実数量には「設計数量」を3倍以上も超えるほどに大きな食い違いがあることを知っていた(C供述第5回257項以下,489項以下参照)。にもかかわらず,被告人Cは,かかる齟齬が生じた理由について,現場作業員から事情を聞くこともなく,その原因を全く追及していない(被告人Cは,公判廷では,し尿性汚泥等についてのかかる「設計数量」と実数量の相違に気付いたので,福岡市に対して,設計数量の見直しの申入れをした旨述べるところであるが,福岡市役所庁舎管理係職員Sは,かかる申し出があったことを明確に否定するところであって,この点の同被告人の供述はたやすく信用することができない。)。結局同被告人は,かかる矛盾点を知りながら,これを放置していたものと認められる。
 
また他方で,被告人Cは,12月14日の作業日に先立って「作業指示票」を作成する際には,わざわざ市庁舎の「設計数量」を逐一明記した上,雑排水槽に関する「作業指示票」(乙48の添付書類)には,「トータル産廃汚泥 13.61立方メートル以上引き抜くこと!!」といった指示を記載し,汚水槽に関する「作業指示票」(乙104の添付書類)には「トータル汚水 5.5立方メートル以上くみ取りして下さい。」と記載した。本件業務の内容を考えれば,具体的な作業の現場では,当初よりの「設計数量」と比べて量が多い・少ないにかかわらず,各汚水槽,雑排水槽に存在する汚泥等はその全部を収集,運搬することが当然であるから,その「作業指示票」に,あえて「設計数量」以上の汚泥等を収集するよう特定して指示すること自体が,かなり不自然である。
 
この点は,被告人Cが,その自白どおり,当初より本件混同行為を知っていて,むしろこれを認容し,かかる事実を隠匿しようと考えていたからこそ,仮に実数量が「設計数量」に満たない場合が生じても,最低限「設計数量」と同量の廃棄物は収集したかのように見せ掛けるよう指示したものと考えれば,十分合理的な記載であるということができる。
イ 他の作業現場について混同収集を前提とする工程表を作成したこと
 
証拠(甲81)によれば,被告人Cは,平成12年7月21日付けで,被告人会社が,春日市内にあるショッピングセンターで雑排水槽及び汚水槽の双方を清掃し,廃棄物収集運搬を行うことを内容とする「工程表」を作成したこと,ところが,当時被告人会社は,春日市においては一般廃棄物の収集運搬許可を得ておらず,産業廃棄物収集運搬の許可しか有していなかったことから,春日市内に位置する現場で作業を行うにあたっては,雑廃車だけを使用していたことが認められる。
 
とすれば,当時の被告人Cは,雑廃車だけを使用する作業現場において,同車両を使って,一般廃棄物たるし尿性汚泥等をも,産業廃棄物たるし尿外の残滓物等と同時に収集運搬することを当然の前提として認識し,かつ認容していたことが端的に推認されるところである。
 
かかる事実は,被告人Cがその自白調書において,市庁舎以外の作業場所でも被告人会社が混同収集行為を行っていた旨自認しているのを裏付ける事実であり,同時に本件業務においても,現場作業員らが本件混同行為を行うことをも認容していたことを疑わせるものである。
ウ 本件業務の作業日程は,本件混同行為を行うことなく,1日で終わらせるには困難なものであったこと
 
被告人Cが作成した「工程表」では,当初より本件業務に基づく具体的な作業は,1日で終了させることを予定していたものであるが,本件業務のような広範囲にわたる多数の汚水槽,雑排水槽の清掃と廃棄物収集を,1日で,しかも中部中継所の受付が終了する午後4時までに,し尿性汚泥等をすべて収集した上これを運搬できるような体制で,作業を終了させることが,かなり困難であるということは,現場作業員らはもちろん,捜査段階における被告人Eや同C自身(乙28)も認めているところであり,これが可能であると説明する被告人Eの公判供述を前提としてすら,少なくとも最初の「工程表」どおりに,作業の各斑が1時間ずつの昼休みを取れるような体制ではとてもできないことは明らかである。
 
かかる困難な作業について,必ずしも十分な人員や車両を配置することなく,作業自体は1日で終わらせるような日程を組んでいるということも,当初から本件混同行為を認識した上で,これを前提とした作業体制を予定していたと見る方が自然である。
(2)自白内容自体の合理性
 
前示のとおり,被告人会社では,かなり以前から,日常的に混同収集行為が行われていたところ,被告人Cも,昭和62年ころの入社以来被告人会社で稼動し,第1業務部に所属したことこそなかったものの,入社後しばらくは現業部署で稼動していたのであり,営業担当となった後も,本件業務を始め,第1業務部が担当する仕事の打合せにも参加していたのであるから,現場作業員らが,現に混同収集行為を行っていた事実を知る機会は十分あったとして不思議でない。
 
そして,混同収集行為をやむなく許容せざるを得なかった事情として,一般廃棄物とは異なる産業廃棄物の処理費用の負担の大きさや,廃棄物収集運搬業者が置かれた立場等の事情を説明した上,会社の存続のためには多数の仕事を引き受けざるを得なかったことや,それが作業現場での少ない人員での過重な負担につながり,効率的でスピーディな作業方法として,混同収集行為を選択せざるを得ず,これを制止することはできなかったことなど,そこで述べられている事実関係は,日常的な混同収集行為をするに至った事情を,十分合理的に説明するものである。
(3)自白の経緯と一貫性
 
被告人Cは,逮捕から11日目の時点で,本件混同行為を認識,認容していた事実を認める供述を始めているが,その後の捜査段階では一貫してその供述を維持していたものである。
 
この点,被告人Cは,公判廷においては,虚偽の自白をした理由として,再逮捕された(平成15年7月17日)前後ころに,それまでの取調べにおいて廃棄物に関する問題について理解を示してくれた検察官から,不起訴にしたかったが上司を説得できなかった旨謝られたところ,検察官らの立場を慮って,内容が真意と異なる調書にサインをした等と供述する(なお,判示第1の事実に対する起訴日は同月16日)。しかしながら,前示のとおり,被告人Cは,同月5日の段階で既にその認識を認める供述をしていたのであり,これに対して,被告人Cによれば,同月17日前後ころに上記の検察官とのやり取りがあったというのであるから,時期的な関係からみて,かかる検察官とのやり取りがきっかけとなったために,真意に反して虚偽の自白調書にサインをしたというのは,信用することができない。
(4)結論
 
以上の事実を総合考慮すれば,結局,被告人Cの捜査段階における供述は,高い信用性を有するということができる。
3 公判供述の検討
 
これに対して,被告人Cは,公判廷においては,本件混同行為に対する認識を否定した上,その具体的な事情として,市庁舎から排出される一般廃棄物に関しては,以前から大体13トンから15トン程度排出されるものと考えていたので,それ故に平成14年には市役所に見積書を提出して,「設計数量」の変更等を依頼した(C供述5回257項以下,500項以下,547項以下)などと供述する。
 
しかしながら,前記のとおり,被告人Cが,平成14年になって福岡市の「設計数量」変更を申入れたという点は,福岡市の担当者がこれを否定しているところである。そもそも以前から「設計数量」と実数量が違っているのを知っていながら,平成14年になって急に「設計数量」変更を申入れたというのも不自然さが残るし,「設計数量」の変更を申し出る以上は,それに先立ち,現場作業員に,「設計数量」と実数量の齟齬の原因が何であるのか,いつごろから実数量がそれほど過大になったのか等について,事情を確認するのが普通ではないかと思われるが,そのような経緯もまったく窺えないのであって,かかる被告人Cの供述は容易には信用できない。
 
結局,前記信用性の高い捜査段階の自白に比べて,本件混同行為を知らなかったとする公判供述は,たやすく信用することができない。
4 結論
 
以上のとおり,信用性の高い被告人Cの捜査段階における供述によれば,同被告人が,市庁舎を含む多くの現場で従来より行われていた違法な混同収集行為を認識し,かつ,認容しており,それ故にこそ,本件混同行為についても,これらを認識し,かつ,認容していたことは,これを優に認定することができる。
第6 争点(2)のうち,被告人Aの認識について
1 本件混同行為を知悉していたことを基礎付ける間接事実
(1)常習的な混同収集行為について,共犯者ら全員が知っていたこと
 
前示のとおり,被告人会社においては,昭和53年ころから一時期を除いて,市庁舎を含めた複数の現場において,常態的に混同収集行為を行っていたものであった。
 
そして,混同収集行為を実際に行っていた第1業務部の現場作業員は,特段の抵抗もなく,当然のようにこれを行っていたものであり,それが違法行為であることを理解していても,それ故に,例えば上司に知られないよう隠さなければならないといった工作や口裏合わせをしていた様子はまったく窺われない。
 
また前示のとおり,実際に,現場責任者であった被告人Eや,過去に第1業務部の現場作業員として働いていた被告人Dはもちろん,廃棄物収集運搬行為の経験のない被告人Cも,かかる事実を認識し,認容していたところである。
(2)被告人Dが,被告人会社からHに対し,実数量より多額の産業廃棄物処理費用を支払う結果につながる口裏合せ工作をしていたこと
 
現場作業員が「マニフェスト」記載量より少量の廃棄物をHに搬入するに先立って,被告人Dが,「マニフェスト」記載量どおりの産業廃棄物を処分したように口裏合わせを依頼する電話連絡をしていたことは,前示のとおりである。
 
さらに,証拠によれば,平成13年に産業廃棄物の海上投棄が全面的に禁止されたことから,被告人会社としては,その陸上処分の委託先を捜す中で,同年8月ころからHに対して産業廃棄物の処理を委託するようになり,同年9月10日付けで「産業廃棄物処理委託契約書に伴う価格契約覚書証」(甲58の添付資料1)を,被告人会社の代表者である被告人AとHの代表者との間で取り交わし,そこで上記産業廃棄物の処理費(報酬費)の単価を,1立方メートル当たり1万円とする旨を約したが,実際には平成14年2月ころからは1立方メートル当たり9000円の処理費で決済されていたこと、しかしそれでも,産業廃棄物の海上投棄ができていたころの処理費に比べて,陸上処分に限られるようになってからの処理費用は,約2倍から3倍に膨れ上がったことの各事実が認められる。
 
このような事情の中で,せいぜい10立方メートルしか処理委託していない産業廃棄物の処理委託費用について,「マニフェスト」通りの14立方メートル分の委託費を支払うことになるような事柄について,被告人会社の1従業員でしかない被告人Dが,自分だけの一存で「マニフェスト」に記載のとおりの数量で処理費を計算して決済することを可とするような意向を表明するとは到底考え難く,このような処理費の出費を伴うような意思決定については,社長として被告人会社の金銭面の決裁権限を掌握していたとみられる被告人Aの意向を聞くなりして,その意向に基づいてH側に意思表明したものとみるのが自然であると考えられるところである。 
(3)被告人Aが,日ごろから,従業員らに対して,「産廃に一廃を混ぜたら一廃たい」などという発言をしていたこと
 
この点の存否については争いがあり,被告人Aは,公判廷において,「Rの仕事の受注を取りに行った際,予算に関する話題の中で,市役所の人間から『産廃のところに大小便器を付ければ,一廃になりますよ』という話を聞いたところ,その後,会社に戻った後,営業会議の際に,この話をして,お客がこのようなことを言うかもしれないから注意をしろと言ったことがあったに過ぎず,日ごろから,『産廃に一廃を混ぜたら一廃たい』という発言をしていたわけではない」と供述し(A供述第6回152項以下),被告人Cも,公判廷においては,被告人Aが,日ごろから前記発言をしていた事実を否定するところである(C供述第5回388項以下)。
 
しかしながら,被告人Aがかかる発言をしていたことは,被告人会社の従業員や元従業員の多くが,同様の供述をしているところである(乙92,甲73,81,85)し,被告人Cも,捜査段階においては,「被告人Aが,普段から作業員たちにも,効率よく数多くの現場で仕事をするように注意し,また,『産廃にション便を混ぜたら一廃たい。』という,違法作業を容認するような発言をしていた」旨供述していたのである(乙28,31,36)。
 
そもそも「産廃に一廃を混ぜたら一廃たい」といった発言自体,非常に特徴的なものであることを考えると,従業員らが,勘違いや記憶違いでかかる供述をするとは到底考えられない。しかもその従業員,元従業員らは,いずれも混同収集行為が違法であることは分かっていたけれど,被告人Aがこのような発言をしていたこともあって,混同収集行為は会社の方針だと考えたので続けていたというように,合理的かつ説得的な状況説明をもって,かかる事実を指摘しているのである。同人らの供述は,相互にその信用性を高め合うものといえる。
 
被告人Cの公判段階供述より,捜査段階の自白供述の方が全体として信用性が高いことも前示のとおりである。
 
これに対して,被告人Cの公判供述は,「Rという排出事業者と,産廃の処分費用に関する話をしていた際に,被告人Aが,費用を安くしたいのであれば,トイレを作って産廃の中にし尿が入れば一廃で扱えるという話をしたことがあり,そのような話が一人歩きしたのかもしれない」というものであるが,被告人Aの公判供述は,「Rの仕事の受注を取りに行った際,市役所の人間がそのような発言をしたのであり,そのとき初めて,し尿が混じった産業廃棄物は一般廃棄物になると知った。それを,その後の営業会議の時に話した」というものである。両者の供述は,産廃にし尿を入れる,という話をしたのが誰なのか,どのような状況でされた会話だったのか,といった場面の説明が全く違うのであって,到底相互に信用性を高め合っていると評価することはできない。
 
さらには,被告人Aも,捜査段階の当初では,自らがかかる発言をしたこと自体を否認していたのに(乙13:平成15年7月13日付),その後,従業員の誰彼となくこのような話をしていたという供述に転じていたものであり(乙3,14:同年8月1日付),やはりその供述には変遷が認められ,その合理的な理由については示されていない。
 
とすれば,上記被告人A及び同Cの公判供述は信用することができず,信用性の高い被告人Cの捜査段階供述(乙28,31,36)及び従業員らの供述(乙92,甲73,81,85)に従って,被告人Aが,日ごろから従業員らに対して,「産廃に一廃を混ぜたら一廃たい」などという発言をしていた事実を認めることができる。
2 上記間接事実からの推認
 
以上のとおりの間接事実を総合的に検討するに,被告人会社においては,昭和53年ころから一時期を除いて,市庁舎を含めた複数の現場において,常態的に混同収集行為を行っていたところ,その事実については,被告人Cや同Dら幹部社員も知っており,また第1業務部の現場作業員も,それがむしろ被告人会社の意向であろうと考えるほどであり,かかる被告人C,同Dや現場作業員らが,被告人Aに対して混同収集の事実を隠匿しようとしていた素振りはまったくなかったのであるから,被告人Aの下にも,現場作業員らが混同収集行為を行っているという事実について,十分知る機会はあり得たものと解され,一人被告人Aだけが混同収集行為の事実を知らなかったというのは想定しがたい。
 
被告人Dが,被告人会社からHに対する,実数量を超える産業廃棄物処理費用の支払いを認容することになるような口裏合せの依頼をしていた経緯も,被告人Aの了解を得ずして被告人Dが独自に決定し得ることとは考えがたい。
 
そして,かかる状況下において,被告人Aは日ごろから,従業員らに対して,「産廃に一廃を混ぜたら一廃たい」などという発言をし,暗に混同収集行為を推奨するような態度を示していたのであり,しかもかかる発言をしていたことについて,公判廷では不合理な弁解に終始していたのである。
 
かかる事情を総合考慮すれば,被告人Aが,現場作業員らが,本件混同行為を含め,多くの現場で従前から混同収集行為を行っていたことを認識し,かつ,認容していたことは,これを優に認定することができるというべきである。
第7 被告人Eの認識について
 
なお,被告人Eも,公判廷で,被告人A,同C及び同Dとの共謀の事実を否定したところである。
 
しかし,前示のとおり,被告人Eは,本件混同行為を行うにあたって,先輩からのやり方を引き継いだものとして,さしたる抵抗感もなくし尿性汚泥等とし尿外の残滓物等を混同して収集することを行っていたのであり,そのことについて,特段上司に知られないように,部下を口止めしたこともなかった。そのような行動,認識自体が,いわば本件混同行為は,上司もこれを承知している会社ぐるみの行為であるものと,被告人Eが考えていたことを推認させるのであって,それはすなわち,被告人Aや同Cや同Dもまた,被告人Eその他の現場作業員らと暗黙の内に意を通じて,本件混同行為を認容しているものと考えていたことを示すものということができる。
第8 結論
 
以上の次第であるから,被告人A,同C及び同Dが,いずれも本件混同行為を認識し,かつ,認容しており,被告人Eも,そのように考えていたことが認められるのであり,そうすると,被告人A,同C及び同Dと,被告人Eら現場作業員との間で,暗黙のうちに意思を相通じ,本件混同行為に対する共謀があったことを優に認定することができ,これに合理的疑いを差し挟む余地はないと判断した。
〈2〉法的判断に関する補足説明
第1 弁護人の主張
 
弁護人らは,判示の各行為は構成要件に該当せず,仮に構成要件に該当するとしても,刑罰をもって対応すべき違法性,すなわち可罰的違法性を欠くものであるから,各被告人は無罪である旨,それぞれ主張する。
 
すなわち,弁護人らは,(1)被告人らが「一般廃棄物であるし尿を含む汚泥」と「産業廃棄物たる汚泥」の混合物を,産業廃棄物を投棄できない中部中継所に搬入した事実があったとしても,「一般廃棄物であるし尿を含む汚泥と産業廃棄物たる汚泥の混合物」は,結局全体として「し尿を含む汚泥」にあたるから,これは一般廃棄物に該当するので,これを産業廃棄物を投棄できない中部中継所に搬入することは何ら違法ではない,(2)被告人らが廃棄物を中間処理施設である中部中継所に搬入する行為は,廃掃法16条がいう「捨て」たとは評価できない,(3)廃掃法16条の「みだりに」捨てたというためには,単なる処理基準違反では「みだりに」捨てたとはならず,その違反の程度が著しいか否か,すなわち,実質的違法性を備えた行為であるか否かによって,その該当性を判断すべきであるが,この点,本件では,(ア)前述のとおり一般廃棄物となる混合物につき,これを一般廃棄物の中間処理施設に搬入したに過ぎないこと,(イ)産業廃棄物と一般廃棄物の区分は必ずしも明確でなく,本件混合物と同様の成分である廃棄物につき,一般廃棄物として,あるいは,一般廃棄物と同様の方法により,処理されているものもあること,(ウ)本件行為によって,環境保全等は全く侵害されていないこと,(エ)処理基準不遵守行為に対して何らの行政指導等もされることなく,いきなり刑罰をもって対応されようとしていることなどが認められ,これらの事情に照らせば,本件行為は実質的違法性を備えておらず,「みだりに」捨てた行為には該当しない,というものである。

 また,(4)本件行為は可罰的違法性がないとの主張に関する弁護人の論拠は,概要,上記(3)と同様のことが当てはまる上,本件の捜査が不公正であったというものである。第2 判断
1 弁護人の主張(1)(本件混合物が一般廃棄物であるとする点)について
 
本件において,検察官は,「一般廃棄物であるし尿を含む汚泥と産業廃棄物である汚泥の混合物…を…産業廃棄物を投棄できない…福岡市中部中継所に…投棄した」行為が,廃掃法16条に違反するとして公訴提起したものであるが,判示のとおり,本件において,「みだりに廃棄物を捨て」た(廃掃法16条)という構成要件に該当しうる行為は,「一般廃棄物であるし尿を含む汚泥と産業廃棄物である汚泥をあえて混同して収集し,その混合物を捨てた」行為,すなわち「本件混同行為の結果としての混合物を捨てた」行為である。
 
とすると,公訴事実中に,単に「混合物を投棄した」という事実を摘示するだけでは,違法な行為を構成する事実を挙示するためには,特定に不十分な点があることは否めず,本件公訴事実においては,さらに外形的に違法行為であることを基礎付ける具体的事実,すなわち本件混同行為について,記載する方が望ましかったといわざるを得ない。
 
もっとも,本件においては,主に本件混同行為と,それに対する認識,認容の有無について当事者間の攻撃防御が尽くされたことは,各弁護人がその弁論においても自認するとおりであり,各被告人の具体的な攻撃防御の権利が損なわれたことはなかったと認められるから,当裁判所としては,訴因変更手続を経ることなく,判示の事実を認定し得るものと判断した。
 
そこで,さらに進んで本件混合物が一般廃棄物であるとする弁護人の主張について検討するに,廃棄物の不法投棄の罪の成否を判断するに当たっては,実行行為の時を基準として当該廃棄物が産業廃棄物に該当するか,それとも一般廃棄物に該当するかを決すべきであるところ,本件における「みだりに廃棄物を捨て」たにあたる実行行為は,「一般廃棄物であるし尿を含む汚泥と産業廃棄物である汚泥をあえて混同して収集し,その混合物を捨てた」行為であり,まさに投棄をする目的で混同収集を開始するその時点を基準として,対象物が産業廃棄物か一般廃棄物かの区別を決すべきことになる。そうすると,本件混同行為を行った結果としての本件混合物を指して,それが一般廃棄物に当たるとする各弁護人の主張は,上記判断の基準時を誤った解釈を前提とするものといわざるを得ず,採用することができない。
2 弁護人の主張(2)(中間処理施設への搬入行為は「捨てた」に当たらないとの点)について
 
この点に関する各弁護人の主張は,要するに,本件において,被告人会社の従業員らは上記の混合物を中間処理に供したに過ぎないのであり,中間処理に供したことを「捨て」たとみることはできないという趣旨のものと解される。
 
しかしながら,そもそも,廃棄物を中間処理に供したというのは,法の定める手続きに従って適正に収集した廃棄物につき,これを適正に中間処理施設に搬入することを指すに他ならず,そうすることによって初めて,適切な中間処理がなされて,一連の適正な処分の流れが講じられるものである。これに対して,前記のとおりの本件混同行為は,一般廃棄物と産業廃棄物とを混同することにより,いずれをも本来の適正な処分の流れから逸脱させて放置したものであり,単に放置した場所が中部中継所という中間処理を行う場所であったに過ぎず,かかる行為によって,本来予定されていた一般廃棄物のみを処理するという中間処理は妨げられ,実施されなかったものである。かかる事態を指して中間処理に供したということはできず,実質的には,本来予定されていたものとは異なる態様によって,不適切に最終処分行為を行った,すなわち「捨て」たと見ざるを得ない。
 
したがって,「捨て」たにあたらないとする弁護人の主張は,採用することができない。
3 弁護人の主張(3)(「みだりに」捨てた行為に該当しないとする点)について
(1)この点,まず,各弁護人主張のとおり,一般廃棄物ないし産業廃棄物の各処理基準に適合しない処分行為が,必ずしも社会通念上も許容されない処分行為に直結するとはいえないことから,単に処理基準に違反したことだけをもって,直ちに「みだりに」捨てたと断ずることができるものではない。廃棄物の性状,数量,地理的条件,行為の態様などの事情を勘案し,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を害しうるものとして社会通念上許容されないと評価できて初めて,「みだりに」捨てた行為に該当すると解するのが相当である。
(2)そこで検討するに,前示のとおり,被告人会社の従業員らは,市庁舎の雑排水槽及び汚水槽を清掃し,その際に生じた産業廃棄物たる汚泥と,一般廃棄物たるし尿を含む汚泥とを,区別することなく収集運搬した混合物を,福岡市との事前協議もその承諾もないままに,産業廃棄物の投棄が許されない中部中継所に搬入して,これを捨てたものである。かかる混合物がし尿を含むからといって,客観的にその全体が一般廃棄物となったとする各弁護人の主張が採用できないことは前示のとおりであり,被告人A,同C,同D及び同Eは,いずれも,かかる事実を認識していたのみならず,それが禁止されている行為であることはそれぞれ自覚していた。
(3)なるほど,専ら水洗トイレからのし尿を含む汚水が流れ込む汚水槽に貯留した一般廃棄物たる汚泥も,主として生活雑排水が流れ込む雑排水槽に貯留した産業廃棄物たる汚泥も,それが他に与える有害性,有毒性という点では,一般的に後者が前者を上回るとは断じがたい。
 
しかし,廃掃法は,産業廃棄物と一般廃棄物を区分することで,処理責任の主体を事業者と市町村とに選別した上で,それぞれ異なる処理基準に委ねているところであり,本件のように,状態・性質・安全性の程度にさほど差がないと思われる廃棄物であっても,法令に基づく許可を得た廃棄物処理業者たる被告人会社において,事前の取決めに反し,安易に産業廃棄物を一般廃棄物に混入させて,一般廃棄物の処理施設に搬入し,捨てることをも黙認,許容するとなれば,一般廃棄物よりはるかに多量といわれる産業廃棄物を,状態・性質・安全性の程度に差がないばかりに,様々な理屈を設けて,実質的には無制約に,一般廃棄物処理施設に搬入して事足れりとすることをも是とする事態を招きかねないこととなる。それは当該一般廃棄物処理施設の処理能力を超え,生活環境の保全と公衆衛生とを直接的に損なう一般的な危険性をはらむことであるばかりか,まさしく法が予定する廃棄物処理の方法,過程を著しく混乱させ,公正な費用負担と廃棄物排出量の抑制という考え方を損ない,排出者責任の原則という法が意図したところと真っ向から対立するものといえるのであって,到底容認できるところではない。
(4)各弁護人は,産業廃棄物と一般廃棄物の区分は必ずしも明確でなく,本件混合物と同様の成分である廃棄物につき,一般廃棄物として,あるいは,一般廃棄物と同様の方法により,処理されているものもある旨指摘するが,だからといって,それゆえに,廃棄物処理に関する条例等に定められた諸手続を経ることなく,福岡市の事前の承諾も得ることなしに,産業廃棄物たる汚泥と一般廃棄物たるし尿を含む汚泥とを故意に混同収集して,その混合物を中部中継所に搬入するという被告人らの行動までもが,同様に容認されるべきと解するいわれは全くない。仮に福岡市の条例等において,一般廃棄物と産業廃棄物を併せて市が処理することを認める「併せ処理」の基準が,実態とそぐわず不合理なものであるとするならば,その是正を促すためにも,まずもって事前の協議と働き掛けを経ることで,例えば,雑排水槽からの産業廃棄物たる汚泥の状態・性質・安全性について具体的に調査し,あるいは単に被告人会社1社のみならず,福岡市全体及びその周辺町等,中部中継所に搬入される可能性のある雑排水槽からの汚泥の総排出量を概算して,それに対比しての中部中継所の処理能力を検討し,また適正な費用負担を求めるための政策的判断を求めること等が要請されてしかるべきなのである。かかる本則と手順を無視し,独自の評価や価値判断に基づいて敢行された,前出の条例等違反の行動を許すことは,それ自体が過誤と濫用のおそれを招く危険かつ不当なことといわなければならない。
(5)以上に加えて,本件は,薄利多売という経営方針を実現すべくして敢行された会社ぐるみの組織的犯行であり,被告人会社においては従来より同種行為が繰り返されていたのであるから,常習的職業的犯行であると認められる。これらの事情にかんがみれば,本件によって,直接,具体的に周囲の環境が汚染された事実があったとは認められないことなど,各弁護人主張の事実を考慮しても,前記のとおりの本件各行為が,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を害しうるものとして社会通念上許容されないものであることは明らかというべきであって,「みだりに」捨てたとはいえないとする各弁護人の主張は,採用することができない。
4 弁護人の主張(4)(可罰的違法性がないとする点)について
 
この点については,前示3と同様である。各弁護人は,本件捜査が不公正であった旨をも主張するが,犯罪事実を立証するために証拠を収集するのは当然の行為であり,本件の捜査活動に取り立てて不適正・不適法なものがあったとは認めがたいし,前示のとおり,本件が常習的かつ組織的で悪質な犯行であることに照らせば,予め警告や改善指示その他の行政指導等がなかったことをもって,不公正な摘発であるということもできない(もとより,弁護人のいう措置命令等の制度と廃掃法16条とは別個独立の規定であり,まずもって,措置命令等が為されなければ,同法16条を適用できないとの関係に立つものではない。)。結局,本件各行為は,可罰的違法性に欠けるところはないといわなければならない。
5 結論
 
以上の次第であるから,前記のとおりの本件混同行為が,構成要件該当性及び可罰的違法性を有することは明らかというべきであって,構成要件該当性ないしは可罰的違法性なき故に各被告人は無罪であるとする各弁護人の主張は,採用することができない。
(法令の適用)
被告人B株式会社について
罰条
 
第1及び第2の各行為 いずれも,平成15年法律第93号(廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律)(以下「改正法」という。)附則3条により同法による改正前の廃棄物の処理及び清掃に関する法律32条1号,25条8号,16条
 
併合罪の処理 刑法45条前段,48条2項
被告人Aについて
罰条
 
第1及び第2の各行為 いずれも刑法60条,改正法附則3条により同法による改正前の廃棄物の処理及び清掃に関する法律25条8号,16条
刑種の選択
 
第1及び第2 いずれも懲役刑及び罰金刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段
       
懲役刑については同法47条本文,10条(犯情の重い第2の罪の刑に法定の加重)
       
罰金刑については同法48条2項
労役場留置 刑法18条1項
刑の執行猶予 刑法25条1項(懲役刑)
被告人C,同D及び同Eについて
罰条
 
第1及び第2の各行為 いずれも刑法60条,改正法附則3条により同法による改正前の廃棄物の処理及び清掃に関する法律25条8号,16条
刑種の選択
 
第1及び第2 いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い第2の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
1 本件は,一般廃棄物及び産業廃棄物の収集,運搬等を業務とする被告人会社において,その代表取締役である被告人A以下,構成員である被告人C,同D,同Eと,他の従業員2名とが,意思を相通じて,会社の業務に関し,2回にわたって,一般廃棄物であるし尿を含む汚泥と産業廃棄物である汚泥とを,故意に混同して収集運搬した上,その混合物を,産業廃棄物を投棄できない中部中継所に搬入してみだりに捨てたという廃掃法違反の事案である。
2 各被告人は,いずれも当該行為が許されないものであることを認識しながら,被告人Aと同Cにあっては,薄利多売の経営方針を実現すべく,作業の効率化を図る等会社の利益をあげるために,また,被告人Dと同Eにあっては,このような会社の利益のため,ひいては自己の保身を図るために、かかる作業の不当性や改善の必要性を顧みることをせず,誠に安易にも本件各犯行に及んだものであり,その犯行動機は,いずれも身勝手なものといわざるを得ない。
 
その犯行態様は,廃棄物収集の過程において,意図して産業廃棄物たる汚泥と一般廃棄物たるし尿を含む汚泥とを混同して収集運搬したという点においても,さらにはそのようにして産業廃棄物と一般廃棄物を混同した混合物を一般廃棄物処理施設に搬入したという点においても,法及び条例等が予定した処理基準違反の程度は著しく,本来の適正な廃棄物処理の流れから産業廃棄物と一般廃棄物のいずれをも逸脱させた行為に他ならない。加えて,本件は,繰り返し行われた同種犯行の一環であることが窺われ,その常習性は顕著であることにかんがみれば,各被告人には,いずれも,当該犯罪に対する規範意識の鈍麻が指摘できるところである。 
3 次に,本件各犯行において,各被告人が果たした役割についてみるに,まず,被告人Aは,法に定められた許可を得て,一般廃棄物及び産業廃棄物の収集,運搬等を業務とする被告人会社の代表取締役として,その従業員らによる廃棄物の適正処理を指導監督すべき立場にあったにもかかわらず,会社の利益を図るという目的のため,自ら率先して違法な混同行為を促す言動に及んでいたものであり,その責任は最も重い。そればかりか,被告人Aは,廃棄物の不適法な収集・運搬が行われているとは知らなかったとして虚偽の弁解に終始した上,本件容疑で捜査を受けた後,従業員らに対して口止めと取られても仕方のない言動に及んだり,公判廷において,裁判が決着した暁には,自分を裏切り会社に損害を与えた被告人Eらに対して,損害賠償を請求する旨供述したりするなど,その罪責を免れんとする態度は露骨であり,そこに反省の情を見出すことはできず,犯情は甚だ悪質である。また,被告人C及び同Dは,被告人Aの下,同じく適正な廃棄物の処理を指導監督すべき立場にありながら,被告人Cにおいては混同行為を放任し,被告人Dにおいてはさらに混同行為の事実を隠蔽する行動に自ら出ていた上,いずれも公判廷においては,虚偽の弁解に拘泥したものであるから,その責任は決して軽くない。被告人Eについても,本件業務の現場責任者として,廃棄物の適正処理を率先して行うべき立場にあったにもかかわらず,自ら直接実行行為に及んだものであり,また,自己の罪責を認めてはいるものの,公判廷においては,会社ぐるみの犯行ではない旨事実を歪曲した供述をして憚らなかったものであって,その犯情は芳しくない。
4 しかしながら,その一方で,被告人らが混同して収集運搬した産業廃棄物と一般廃棄物については,確かにその状態・性質・安全性の点では,これらを併せて処理することも可能であるのみならず,併せて処理することに,合理性がないとはいえないと思料されるところである。すなわち,被告人らが収集した一般廃棄物たる汚泥は,そのほとんどが水洗トイレからのし尿を含む汚水だけが流入する汚水槽に溜まった,汚水や洗浄水混じりの汚泥であり,同様に被告人らが収集した産業廃棄物たる汚泥は,主として生活雑排水のみが流入する雑排水槽に溜まった,排水や洗浄水の混じった汚泥なのであるが,これらの汚水槽及び雑排水槽は,その多くが,もともとポンプアップ装置を利用することによって下水道管に接続され,いずれの槽からの汚水,排水であっても,可能な限りは下水道に送水することが予定されているものであり,その中には,相当程度は汚泥状のものも含まれることになると思われるが,そうして送り出された汚水,排水や汚泥状のものは,その全体が下水道汚水として,中部水処理センターに直接送水されて下水処理を受けることとなる。この中部水処理センターは,中部中継所が,中間処理後の汚水や汚泥等を最終的に圧送している,公共下水道の終末処理施設なのであるから(甲53),同じく雑排水槽に溜まった汚泥状のものであっても,ポンプアップされて下水道管に送水されたものであれば,もとより産業廃棄物としての扱いを受けることもなく,中部中継所を経由した汚水や汚泥等と,最終的には同一処理を施される仕組みとなっているのである。とすれば,ポンプアップしきれずに滞留した汚泥であっても,仮にその処理量の限度の確認や適切公平な処理費用の徴収等といった現実的な諸問題が,前出の条例等に従った適正な手続の下で解決可能ということになれば,中部中継所において,一般廃棄物たるし尿を含む汚泥と共に,雑排水槽から収集した産業廃棄物たる汚泥をも,「併せ処理」することを許容する素地があり得るのではないかと思料されるのであり,また仮にその可能性があるのであれば,単に被告人会社1社の作業効率の良し悪しという問題ではなく,社会全体から見た廃棄物処理の効率性という点から考えて,「併せ処理」という方法を選択することも,あながち不合理とはいえないと思われるからである。
 
さらに,実際には,中部中継所に搬入された判示の各混合物は,その他の一般廃棄物と共に,中部中継所における通常業務の範囲内で中間処理された上で中部水処理センターに送水されるなどして,既に最終処分も終了していることが認められ,廃棄物自体が今も不法投棄の状態で現存して今後の適正処理が必要とされたり,汚染された周辺環境の原状回復やその費用負担が問題となる事態が発生したとは認められず,その限りで,現実の問題として,捨てられた廃棄物が周囲の環境を汚染したり,公衆衛生を損なったとは認めがたいところである。
 
また,被告人会社を除く被告人らは,いずれも,平成15年6月25日に判示第1の事実の容疑で通常逮捕されて以降,2か月余りの期間にわたり身柄拘束を受けたものであり,さらに,各被告人の個別の事情についてみるに,被告人Aについては,執行を猶予された懲役刑の裁判歴はあるものの懲役刑や禁錮刑の実刑となった前科はないことが,被告人Cについては,幼年期の子どもがいることや,前歴はあるものの前科はないことが,被告人Dについては,自己保身のためとはいえ,その立場上,長年採用されてきた会社の方針に正面切って反対し,あるいは作業方法の改善を勧告することが憚られたという心情も,理解できないことではなく,そこにはなお同情の余地があることや,罰金刑の処罰歴はあるものの,懲役刑や禁錮刑の前科はないことが,被告人Eについては,他の従業員に直接指示をして,自ら犯行に及んでいるとはいえ,それも従前からの慣行を引き継いだままに行ったものに過ぎず,他の被告人らと比較すれば従属的な立場にあったと評価でき,その立場上,会社の方針に逆らいがたかったという心情には,なお同情の余地があることや,前科前歴がないことが,各被告人のために酌むことのできる事情として,それぞれ認められる。
5 そこで,これらの諸事情を総合考慮して,被告人らを主文の刑に処した上(なお,被告人Aについては,本件犯行によって直接的な利益を得たものではないが,薄利多売という経営方針を実現する手段として,これを率先して促す言動に出ていたものであり,本件犯行の結果,本来より多くの業務をこなせたという間接的な利益も看過し得ないことにかんがみれば,罰金刑を併科するのが相当である。),その懲役刑については,いずれもその刑の執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。
(検察官中井公哉,私選弁護人新道弘康〔主任〕,同船木誠一郎〔副主任〕,同三ツ角直正〔以上,被告人B株式会社,同A及び同C〕,私選弁護人奥田貫介〔被告人Dにつき主任,同A〕,私選弁護人加茂雅也〔被告人D及び同E〕各出席)
(求刑―被告人B株式会社に対し罰金200万円,被告人Aに対し懲役2年6月及び罰金200万円,被告人Cに対し懲役2年,被告人Dに対し懲役2年,被告人Eに対し懲役1年6月)
(福岡地方裁判所第1刑事部)

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