恐喝福岡5

恐喝福岡5

福岡高等裁判所那覇支部/平成12年(う)第47号

主文
不詳

理由
1 原判決は,「被告人は,氏名不詳の者3名と共謀の上,平成11年10月19日午後7時ころ,沖縄県沖縄市海邦町3番地の54付近道路上において,X(当47年)に対し,同人が運転する軽自動車が被告人の運転する普通乗用自動車に衝突したことに因縁をつけ,その胸ぐらをつかんで『こいつお酒を飲んでいる。お前,車をぶつけたな。警察に届けたらお前免許なくなるな。どうする。』などと申し向けた上,同人を被告人らが乗車していた乗用車の後部座席に押し込んで『修理代はいくらかかると思っているのか。150万円はかかるよ。こいつを山原の山に連れていって埋めてやりますか。』などと申し向けて金員の交付を要求し,もしこの要求に応じなければXの生命身体にどのような危害を加えるかも知れない気勢を示して脅迫し,畏怖した同人に修理代として150万円支払う旨約束させて金員を交付させようとしたが,同人が警察に通報したためその目的を遂げなかったものである。」との公訴事実につき,Xの原審における供述には曖昧な部分や変転する部分が多く,基本的な事実関係においてさえ,単なる記憶の減退で説明がつくか疑問を持たざるを得ない部分があるし,同人の認識,記憶,表現等の能力を含めて疑問を抱かざるを得ない事情もあり,また,Xの検察官調書の信用性もたやすく肯定することがためらわれるから,Xの供述を全面的に信用することはできない。Xから被害直後に,被害状況を説明され,相談されたとするXの妻であるA,その後,Xが,Aと共に被害相談に訪れた交番の警察官であるBの各供述もそれほど高い信用性を認めることができないので,Xの供述の信用性を補強するに足りない。これに対し,Xを脅迫して金員を喝取したことはなく,同人が自発的に事故に関し修理代として50万円を支払うことを約束したとする被告人の弁解は相当程度に具体的であり,客観的事実関係と少なくとも矛盾せず,その内容も不自然とは言い切れないから,本件公訴事実の存在が,合理的疑いを容れない程度の蓋然性をもって立証されたということはできないと判示している。
2 しかし,Xの原審における供述を検討するに,〔1〕Xは,捜査公判を通じて基本的な事実関係については変遷のない一貫した供述をしているし,その内容も詳細かつ具体的で,合理的であり,他の証拠関係から認定できる事実とも符合している,〔2〕Xは帰宅直後に泡瀬交番に本件被害に関する相談に赴き,翌日には具志川警察署に電話で本件被害を申告しているところ,暴力団組員の被告人に対し極度の恐怖心を抱いていたXが警察官に虚偽の事実を申し立て,被告人を罪に落とし入れるだけの理由は認められない,〔3〕本件被害直後に,Xから本件被害の状況を聞いたAやBらはXが供述する被害状況と符合する供述をしており,Xの供述の信用性を裏付けている,〔4〕確かに,Xの原審における供述には,曖昧であったり,一見変転していると見られる部分があるが,Xが暴力団組員の被告人に対し,極度の恐怖感を抱いており,しかも,その証言内容等を見ると被告人の在廷する法廷で証言することによる極度の緊張状態も加わったものと認められ,そのような状態のもとで曖昧であったり,一見変転しているように見られる供述がなされたとしても,無理からぬことであって,前記のようなXの供述の信用性を否定する理由とは言えないことから,Xの供述は十分信用することができる。
 
また,原判決は,Xの記憶力や表現力の不確かさからすると,自らの確かな記憶に基づいて検察官調書のように理路整然と供述できたか疑問を払拭できない等とするが,Xは,法廷では恐怖感と極めて高い緊張状態で供述しているのに対し,検察官に対しては原審の供述時より時間的に見て記憶の鮮明な時期に,被告人のいない状態で落ち着いて供述したものということができるから,法廷での供述が曖昧であるのに,検察官調書が理路整然としていることをもってその信用性を否定する事情とは言えず,却って,検察官がXの供述を誘導した形跡等も認められないことに鑑みれば,その信用性は高いものというべきである。
3 一方,被告人の供述について検討するに,〔1〕被告人は,本件事故の状況について,X車両が蛇行して隣の車線に入ったので,右折すると思って直進していると,X車両が再び蛇行して被告人車両の進行車線に入って来たため衝突したと供述するが、捜査報告書によれば,その付近には右折する道路は存在しないことが認められ,客観的事実と矛盾するものである,〔2〕被告人は,50万円という金額はXの方から自発的に言い出したものであると供述するが,その経緯に関する供述が極めて不自然である,〔3〕被告人は,修理代金としては10万円前後が妥当であり,50万円は高いと思ったが,Xが払うというのであれば正当な額であると考えた旨供述をするが,被告人車両の破損の程度は軽く,その修理代金は3万円程度にすぎないことからして,自己の行為を正当化しようとするものにすぎず,不合理なものであることなどからすれば,被告人の供述には不自然・不合理な点が認められ,被告人の供述は信用し難いと言わざるを得ない。
4 以上のとおりであるから,公訴事実に沿う原審の証拠の信用性,証拠価値について原判決が種々説示するところは,いずれも首肯し得ず,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるというべきである。

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