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詐欺福岡11

詐欺福岡11

福岡高等裁判所/平成13年(う)第152号

主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役3年に処する。
原審における未決勾留日数中140日をその刑に算入する。
押収してある口座開設のお客さま用新規申込書1枚(福岡地方裁判所平成12年押第126号の1)の偽造部分を没収する。

理由
 
本件控訴の趣意は,弁護人菅藤浩三が提出した控訴趣意書記載のとおりであるから,これを引用する。
 
論旨は,要するに,量刑不当の主張であるが,論旨に先立ち職権で検討するに,弁護人は,控訴趣意書提出期限後の第2回公判において「控訴趣意補充書」と題する書面のとおり意見を述べ,原判示第2については,被告人が銀行の窓口係員から交付を受けた貯蓄総合口座通帳は財物ではなく,かつ,被告人には不法領得の意思も認められないので,被告人には詐欺罪は成立しないのに,上記通帳の交付を受けた被告人の行為が詐欺罪に当たるとして,刑法246条1項を適用した原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある旨主張し,これに対し,検察官は,上記通帳は,名義人の預金口座の存在や債権債務額を明らかにする書面として重要性を有するものであり,少額とはいえ財産的な価値もあることを考慮すれば,その財物性には何らの問題もなく,また,他人名義による預金口座の開設が脱税,マネーロンダリング等の手段として悪用されるようになり,それを受けて他人名義での預金口座開設が許されなくなり,当該行為の悪性がより強くなったというべきであって,詐欺の定型性を帯びるものといえるから,上記通帳の交付を受けた被告人の行為は詐欺罪に該当すると主張するので,まず,この点につき,職権により判断する。
 
記録によれば,被告人は,原判決の罪となるべき事実第2につき,同記載の日時場所において,秋山忠行名義の口座開設申込書を偽造し,これを同人名義の国民健康保険被保険者証等とともに西日本銀行別府支店の窓口係員に提出し,行使したことで,秋山名義の貯蓄総合口座(ローンに関する特約等は認められない。)が開設されるとともに,被告人は上記窓口係員から秋山名義の貯蓄総合口座通帳1通の交付を受けたことが認められるところ,確かに,預金口座が開設されることにより,当該口座の名義人としては,銀行が提供する預金の受入れ,保管,振込送金等の銀行業務に伴う利便を利用できる地位を取得するから,一見財産上の利益を得たものと解してよいようにも見える。しかし,単なる他人名義の口座開設が,従来詐欺罪を構成するものとは考えられてこなかったのは,そのことによって銀行は何ら損害を被らず,預金獲得による利益の方が利便の提供という負担より通常上回り,その方が銀行としては利益になるという事情によるものであったと解される。その事実を踏まえ考察すると,最近これが許されなくなったのは,他人ないし架空名義の口座が脱税や不正取引等に利用されることから,その防止のための規制が必要になり,いわば国家的な見地からの規制が加えられたことにより,他人ないし架空名義の口座が禁止されるに至ったと考えられるのであって,この点を除けば,従来と事情は全く変わっておらず,例え他人ないし架空人名義で口座を開設されたとしても,銀行としては,当該口座を利用する預金者との間で取引約款に従った債権債務を取得するにすぎず,このような口座の開設により直ちに財産的な損害を生じるといった関係にはないが,これを許した場合,監督官庁から業務に関する不利益処分を受けたり,脱税や不正な取引等を助長しているとのそしりを受けるのを避けるために,法規に従い証明書の提示等を要求しているものと理解される。したがって,他人名義による預金口座開設の利益は,それにとどまる限り,従来と同様に,詐欺罪の予想する利益の定型性を欠くと解するのが相当であり,その行為は金融秩序に関する規制のための法規に触れることはあり得るにしても,詐欺罪には当たらないと解するのが相当である。
 
そして,預金通帳は,口座の開設を証明するとともに、その後の利用状況を記録し,預入や払戻をする際に使用されるものとして,口座開設に伴い当然に交付される証明書類似の書類にすぎないものであって,銀行との関係においては独立して財産的価値を問題にすべきものとはいえないところ,他人名義による口座開設が詐欺罪の予定する利益としての定型性を欠くと解される以上,それに伴う通帳の取得も,1項詐欺を構成しないというべきである。
 
以上のとおりであって,原判決の罪となるべき事実第2に記載された被告人の行為のうち,銀行の窓口係員から貯蓄総合口座通帳1通の交付を受けた点については詐欺罪が成立しないにもかかわらず,その成立を認め有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令解釈,適用の誤りがあるというべきであるから,原判決は破棄を免れない。 
 
よって,量刑不当の論旨に対する判断を省略し,刑訴法397条1項,380条により原判決を破棄した上,同法400条ただし書により当審において直ちに次のとおり自判する。
(罪となるべき事実)
 
原判決の罪となるべき事実欄のうち,第2の事実を,「銀行に他人名義の貯蓄総合口座を開設しようと企て,平成11年12月13日午前9時30分ころ,大分県別府市元町1番26号株式会社西日本銀行別府支店において,行使の目的をもって,ほしいままに,同店備付けの口座開設のお客様用新規申込書用紙のおところ欄に「福岡県筑紫野市大字塔原401-2」,おなまえ欄に「秋山忠行」,生年月日欄に「30.7.12」などと冒書し,もって,秋山忠行名義の同新規申込書1枚(福岡地方裁判所平成12年押第126号の1)を偽造した上,即時同所において,同支店窓口係員澤井典子に対し,これをあたかも真正に成立したものであるかのように装い,提出して行使し」と改めるほかは,同欄記載のとおりであるから,これを引用する。
(証拠の標目)省略
(法令の適用)
罰条 判示第1の1,2,第3の1ないし6の各所為のうち,建造物侵入又は住居侵入の点はいずれも刑法60条,130条前段,窃盗の点はいずれも同法60条,235条
 
判示第1の3の所為のうち,有印私文書偽造の点は同法60条,159条1項,同行使の点は同法60条,161条1項,159条1項,詐欺の点は同法60条,246条1項

 判示第2の所為のうち,有印私文書偽造の点は同法159条1項,同行使の点は同法161条1項,159条1項
科刑上一罪の処理 刑法54条1項後段,10条(判示第1の1,2,第3の1ないし6の各所為についてはいずれも重い窃盗罪の刑で,判示第1の3の所為については最も重い詐欺罪の刑で〔ただし,短期は偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。〕,判示第2の所為について犯情の重い偽造有印私文書行使罪の刑でそれぞれ処断。)
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の3の一罪の刑に法定の加重。)
原審未決勾留日数の裁定算入 刑法21条
没収 刑法19条1項1号,2項本文(判示第2の偽造私文書行使罪の組成物件として)
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書(原審及び当審における訴訟費用については,被告人に負担させない。)
(預金通帳の詐欺の訴因について)
 
本件公訴事実中,預金通帳の詐欺の訴因は原判示第2のとおりであって,上記のとおり罪とならないが,私文書偽造,同行使の罪と一罪の関係にあるとして起訴されたものであるから,主文において特に無罪の言渡しをしない。
(量刑事情)
 
本件は,被告人が,(1)共犯者とともに,〔1〕前後8回にわたり,住居等に侵入して,金品を窃取し(判示第1の1,2,第3の1ないし6),〔2〕窃取した預金通帳等を用いて,預金の支払請求書を偽造し,これらを行使して,銀行から預金をだまし取り(判示第1の3),(2)単独で,他人名義の預金口座を開設する目的で,預金口座開設の申込書を偽造,行使した(判示第2),という住居・建造物侵入,窃盗,有印私文書偽造,同行使,詐欺の事案であるところ,記録により認められる本件各犯行の動機,態様,結果,被告人の前科関係,生活態度等,とりわけ,上記各住居・建造物侵入,窃盗の事犯については,いずれも共犯者とともに自動車で徘徊し,留守宅を見つけては窓ガラスを割って解錠するなどして屋内に侵入し,引き続き現金や換金しやすい貴金属類等にねらいをつけて盗みを行うなど,いずれも職業的で手慣れた手口の悪質な態様の犯行であること,しかも,職に就かない生活を続ける中で犯していて,犯行の回数も多く,判示第3の犯行に際しては1日のうちに6か所で同様の犯行を反復するなど,手際よく犯行を遂げていて常習性が認められること,被告人は,犯罪の実行場面では共犯者らを指揮するなど,本件各犯行において重要な役割を果たし,応分の分け前をも取得していること,一連の犯行を通じて,多数の被害者に相当多額の損害を与えたにもかかわらず,何らの被害弁償もしていないこと,被告人には窃盗の前科を含め多数の前科があることなどの点に照らせば,被告人の刑責は重いというべきであり,ここ十数年間は盗犯で処罰されていないことや被告人の反省の情などの被告人のために酌むべき事情を考慮しても,本件については主文程度の刑を免れない。
 
よって,主文のとおり判決する。
(福岡高等裁判所第二刑事部)

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