殺人福岡4

殺人福岡4

福岡高等裁判所/平成19年(う)第475号

主文
1審判決を破棄する。
被告人は無罪。

理由
 
本件控訴の理由は,主任弁護人及び弁護人作成の控訴趣意書に記載されたとおり,訴訟手続の法令違反及び事実誤認の主張である。これに対する答弁は,検察官提出の答弁書に記載されたとおり,その主張には理由がないというものである。
 
そこで,検討したところ,この裁判所は,訴訟手続の法令違反をいう弁護人の主張には理由があるものと認め,そのため事実誤認の控訴理由について判断するまでもなく1審判決は破棄を免れず,その上で,この被告事件を自ら判決をするのが相当であると考え,被告人は無罪であると判断したので,以下理由を説明する。
第1 訴訟手続の法令違反の控訴理由について
1 弁護人の主張―不意打ち,防御権侵害―
 
本件は,1審の裁判所が,殺人の共同正犯の訴因に対し,殺人の幇助犯の犯罪事実を認定したものであるが,弁護人は,もし,1審の裁判所が,殺人の幇助犯の成否について弁護人に防御の機会を与えたのであれば,弁護人としては,被告人から,その点を踏まえた供述を得ることができていたもので,その結果,確実に無罪が言い渡されていたはずである,そうであるのに,1審の裁判所が,訴因変更の手続を踏むことなく,殺人の幇助犯の成立を認めたのは,著しい不意打ちであり,防御権の侵害であるといわざるを得ず,訴訟手続の法令違反がある,と主張する。
2 公訴事実―殺人の共同正犯―
 
本件の公訴事実の要旨は,次のとおり,殺人の共同正犯の事案である。
「被告人は,bと共謀の上,平成6年10月22日未明ころ,福岡県糟屋郡○○町のc(当時34歳のbの前夫)(被害者)方兼有限会社d事務所において,cに対し,殺意をもって,その腹部を刃体の長さ約18センチメートルの包丁で突き刺すなどし,よって,そのころ,その場において,被害者を腹部刺創による血管損傷に基づく出血性ショックにより死亡させた」
3 1審の裁判所が認定した犯罪事実―殺人の幇助犯―
 
これに対し,1審の裁判所は,bと被告人との間において,被害者殺害の共謀が事前に成立していたものの,犯行の直前でその共謀が解消され,bが単独で殺害を実行したとして殺人の共同正犯の成立を否定した上,被告人に対し,次のとおり,殺人の幇助犯の犯罪事実を認定して,懲役3年6か月の判決を言い渡した。なお,1審の訴訟手続においては,判決に至るまで,訴因変更の手続はとられていない。
「被告人は,bが,平成6年10月22日未明ころ,d事務所1階和室において,被害者に対し,殺意をもって,その腹部及び腰部を包丁で突き刺し,よって,そのころ,その場において,被害者を腹部刺創による血管損傷に基づく出血性ショックにより死亡させて殺害した際,これに先立つ同月中旬ころ,bから被害者を殺害する手伝いを頼まれてこれを承諾し,その後被告人自らがbと一緒に被害者を殺害する行為に出ることは断ったものの,被害者を殺害した後の事後処理等について,bから協力を求められればこれに協力する気持ちを持ち続けるとともに,bにもそのことを期待させ,もって,bの殺人の犯行を容易にさせてこれを幇助した」
4 1審での争点,当事者の主張及び1審の裁判所の判断
 
1審での争点は,〔1〕事前共謀の成否,〔2〕事前共謀の解消の有無,〔3〕被告人が被害者殺害の実行行為に及んだか否かである。
 
争点に関する当事者の主張をみると,まず,検察官の主張の骨子は,次のとおりである。
「dの経営が行き詰まって多額の借金を抱えたbは,被害者を自殺に見せかけて殺害し,保険金で借金を返済しようと決意したものの,一人で実行することは困難であると考え,以前自分の子どもの家庭教師をしてもらったことがきっかけで自分に強い恋慕の情を抱いている被告人であれば協力してくれるものと考え,平成6年10月10日前後ころ,自分の窮状を訴えるとともに被害者殺害の協力を依頼し,これを承諾した被告人との間で,被害者殺害の共謀を遂げた。そして,被告人は,「完全自殺マニュアル」という自殺に関する本から得た知識により,被害者殺害の目的で,bに対し,ベンジン又はシンナーを渡して,これを飲めば死ぬことを教えたり,刃物で腹部を深く刺して動脈を切り,その刃物をそのまま放置せずに抜けば出血多量で死ぬことを教えたりした。bは,10月21日夜,被告人からの指示どおり,被害者に対し,ウィスキーとサイレース(睡眠導入剤)を飲ませて,d事務所1階和室に寝かせると,被告人を電話で呼び寄せた。翌22日未明ころ,bは,被告人から包丁を渡された上,「腹を刺せ」と指示され,寝ている被害者の腹部に包丁を向けて構えたが,ためらっていたところ,被告人がその包丁を取上げて,被害者の腹部を1回突き刺した。さらに,被告人は,bがその和室を離れた後,被害者の背部を1回突き刺して殺害した」
 
これに対し,弁護人の主張の骨子は,次のとおりである。
「被告人は,10月初旬ころ,bから,被害者殺害を依頼されて承諾したが,具体的な取り決めなどはなかったから,共謀は成立していない。仮に事前共謀が成立していたとしても,10月15日ころ,bの当時の住まい(e)において,bの依頼により,仰向けに寝ていた被害者を刺そうとして,包丁を握って身構えたが,自分には無理だと悟って止めたのであるから,この時点で殺害の共謀は消滅した。共謀が消滅したことは,その後,犯行直前の10月21日夜,bから被害者殺害の手伝いを依頼されたのに対し,被告人がこれを断った上,殺害を阻止するため,公衆電話から110番通報したことによっても補強されている(ただし,動揺したため用件を伝えないまま電話を切った)。いわんや,被告人は,被害者が殺害された時,現場であるd事務所には行っておらず,実行行為をしていない。被告人は,bが被害者殺害を実行した後,bが犯行の際に着用していた着衣等の処分や,被害者が死亡しているか否かの確認を依頼されたのに対し,bを助けたいとの思いから承諾して依頼どおりの行動をとったが,共同正犯としての責任はない。したがって,被告人は無罪である」
 
そして,争点に関する証拠構造をみると,検察官の主張は,bの捜査段階の供述(検察官調書)に依拠しているのに対し,弁護人の主張は,被告人の供述に基づいている(なお,今回の犯行は,当時は自殺として処理され,その10年後に起訴された事件であるため,時間の壁に阻まれて,供述の信用性判断に必要な裏付け証拠が必ずしも十分に収集されていないという事情がある)。そのため,b及び被告人の供述の信用性が問題となり,特にbについては,公判では被告人に責任転嫁する方向で大きく供述を変え,その取調べ状況が問題になったこともあって,審理においては,併合審理を受けていたbに対する被告人質問が8回,被告人に対する被告人質問が4回にわたって行われたほか,bの取調べ状況を立証するため,取調べ担当警察官に対する証人尋問が3回行われるなどした。
 
これに対し,1審の裁判所は,「bの検察官調書については,その内容自体に不自然,不合理な点があるというだけでなく,b供述そのものには,その供述の根幹部分ともいうべき犯行の態様や犯行前後の行動等について到底納得し難い変遷があること,さらに,b供述は,公判供述だけでなく,捜査段階での供述においても,b自身の責任を軽減し,被告人に押し付けようとする姿勢が見て取れることに照らすと,bの検察官調書の内容をそのまま信用するには疑問が残る」とし(1審判決25頁),他方で「被告人の供述は全体としてその信用性が高いと言える」として(35頁),被告人の供述を前提に検討した結果,被害者殺害はbが単独で実行したものと認定した上,bと被告人との間には,10月中旬に被害者殺害の共謀が成立したものの,犯行前日のbからの協力依頼を被告人が断った時点でその共謀は解消されとして,殺人の共同正犯の成立を否定しつつも,なお被告人には,被害者殺害後の事後処理等について,bから協力を求められれば,これに協力してもよいと考えており,bも,被告人に対し,その事後処理等の協力を求めれば,これに応じてくれると期待しており,bの被害者殺害の実行を心理的に容易にしたとして,被告人について殺人の幇助犯の成立を認めたものである。
5 この裁判所の判断
 
以上を前提として検討すると,1審の審理においては,〔1〕事前共謀の成否,〔2〕事前共謀の解消の有無,〔3〕被告人が被害者殺害の実行行為に及んだか否かが争点となり,そのため,検察官及び弁護人の主張からも明らかなとおり,当事者は,被害者殺害までにされたbと被告人との間の会話内容や被告人のbに対する協力内容,さらには被害者の殺害状況,特に被告人が実行したのか否かという点に関して,攻防を繰り広げていたものである。
 
一般に,共同正犯の訴因に対し,訴因変更の手続を経ることなく幇助犯を認定することは,いわゆる縮小認定として許容されることがあるとしても,これまでみたとおり,1審での当事者の攻防は,被告人に関していえば,もっぱら,被害者殺害の場面を含めそれまでの被告人の有形的・物理的関与を巡って行われたと評価することができる。これに対し,1審の裁判所が認定した犯罪事実は,被告人が,被害者殺害後の事後処理等についてbに協力してもよいと考えており,bも,それに期待していたというもので,黙示の無形的・心理的幇助であるが,両者は質的にかなり異なるものであるといわざるを得ない。このような場合,被告人の防御の対象も,当然に異なってくるが,1審においては,この点について訴因変更の手続がとられていないことはもちろん,明示にも黙示にも争点となっていなかったため,4回の公判期日にわたって行われた被告人に対する質問において,弁護人だけでなく,検察官や裁判所も,共謀が解消した後,なお被害者殺害後の事後処理等の協力の意思があったか否かなどに関して,被告人に対し,まったく質問していないのである(もとより,bに対しても,この点に関する質問は一切されていない)。
 
そうであるのに,1審の裁判所が無形的・心理的幇助犯の成立を認めたのは,被告人の防御が尽くされないままされた不意打ちの認定であるといわざるを得ない。
 
したがって,1審の訴訟手続には法令違反があり,その違反が判決に影響を及ぼすことは明らかである。
 
この点,1審の裁判所は,「被告人に幇助犯としての責任を認めることは,検察官主張の公訴事実を縮小して認定するものである上,その内容は,被告人の公判供述に従って事実を認定するものであって,被告人の防御権を侵害するものではないと言うべきであるから,訴因変更の手続をとる必要はないと解する」と説明するが(1審判決44頁以下),不意打ちや防御権侵害の問題は,被告人の公判供述に従って事実認定していれば回避される筋合いのものではないから,失当である(もし,そのような考え方が許されるとすると,被告人としては,狭義の共犯を含め公訴事実の同一性がある範囲において,自己の供述に基づき様々な認定があり得ることを想定しながら防御しなければならず,それが過重な負担であることは明らかである)。
 
以上から,訴訟手続の法令違反をいう弁護人の主張には理由がある。
第2 破棄差し戻しないし自判の可否
1 訴因変更等の要否
 
上記のとおり,訴訟手続の法令違反をいう弁護人の主張に理由がある以上,弁護人のその他の控訴理由について判断するまでもなく,1審判決は破棄を免れない。
 
しかし,被告人に防御の機会を与えれば,1審の裁判所が認定した内容による殺人の幇助犯について有罪の認定をし得るというのであれば,この被告事件を1審の裁判所に差し戻した上,1審で訴因変更の手続等を行わせる必要がある。そこで,この点を検討する。
2 殺人の幇助犯が認定できない理由
 
1審の裁判所が認定した殺人の幇助犯の犯罪事実は,先にみたとおりであるが(第1の3),本件の証拠を精査しても,bが被害者の殺害を実行した後,その事後処理等について,被告人が協力してもよいと考えており,bも,事後処理等について被告人の協力が得られるものと期待していたものと認めるに足りる証拠はない。
 
この点に関する1審の裁判所の説明は,要旨次のとおりである(1審判決40頁以下)。
「被告人は,10月中旬ころ,bから,電話で「死なないと保険が出ないので,もう殺すしかない。殺すのを手伝ってくれますか」と頼まれ,当時bのことがとても好きで,何とか力になりたいと思い,これを承諾した。この時点において,bと被告人との間に,被害者殺害の事前共謀が成立した。
 
ところが,被告人は,10月15日前後ころ,bからe(当時のbの住まい)に呼び出され,bから依頼されるまま,仰向けに寝ている被害者の腹部を包丁で刺そうとしたものの,恐くて刺すことができず,さらに,犯行前日の夜,bから電話があり,「今,dに来ている。被害者は寝ている。これからやるから手伝ってください」と言われたものの,「僕にはできません」と言って断った。そのため,bは,被告人と協力して被害者殺害に及ぶことを断念し,敢えて1人で被害者殺害を実行することを決意し,実行した。そうすると,犯行直前に被告人が協力を断った時点において,bと被告人との間における被害者殺害に関する事前共謀は解消した。
 
もっとも,被告人は,被害者殺害の事後処理等の手伝いをすることまでをも断ったものではない。すなわち,被告人は,bに対し恋愛感情を抱き,事件の前後にかけて,bからの求めに応じて資金援助を行い,一度は被害者殺害の共謀を遂げ,実際にも被告人が被害者殺害に向けてbに協力をした上,被告人がそれを実行しようとまでしたことや,bが被害者を殺害した後,bから,血の付いた軍手などが入った紙袋を渡され,bの指示どおりこれを廃棄したり,「刺してすぐ恐くなって,逃げてきてしまった。被害者が死んだかどうか,確認してこなかった。dに行って,被害者が死んでいるか見てきてほしい」とのbの依頼に応じて,1人でd事務所に行って,被害者が死亡しているのを確認してbにその旨連絡していること,犯行直前の協力依頼を断った後,bが被害者を殺害するのを止めなければいけないと考え,いったんは公衆電話から110番通報をしたものの,何ら詳しい内容を伝えないうちに,このままbに被害者を殺害させて死亡保険金で借金を返済させた方がいいのではないかという迷いが生じ,結局,電話を途中で止めてしまったことなどからすれば,犯行直前の協力依頼を断った趣旨は,bと一緒に被害者を殺害する行為に出ることについては断るというものではあるが,他方で,被告人は,何とかして力になって,bや子どもたちを借金地獄から救い出してあげたいという気持ちを依然として持ち続けており,bから,被害者を殺害した後,その事後処理等について協力を求められた場合には,これに協力してもよいと考えていたと認めるのが相当である。
 
他方,bにおいても,単独で被害者殺害を実行した直後に,被告人に対し,軍手等の処分や被害者が死亡しているかの確認を依頼していることからすれば,被害者殺害の手伝い自体は断られたものの,被告人が依然として自分に好意を抱いており,被害者を殺害した後の事後処理等について協力を求めれば,これに応じてくれるものと期待していたことが明らかである」
 
しかしながら,被告人が,bやその子どもたちのために何とか力になりたいと,どんなに強く思っていたとしても,犯行直前のbからの協力依頼を断った際に,被告人が,被害者殺害を実行したbから,その事後処理等の協力を求められるかもしれないと考えていたことをうがわせる証拠はまったくない。むしろ,被告人にとっては,犯行直前のbからの協力依頼を断った際に,これからbが実行しようとしていることについては,bが,寝ている被害者を殺害しようとしていること,そして,その方法として,包丁で被害者の腹部を刺すのではないかということは分かっていたにしても,それ以上に具体的なこと,例えば,bが自分とは別の誰かに協力を依頼して実行するのか,それともbが1人で実行するのか,自殺を装った殺害はbの目論見どおり成功するのか否か,自殺を装うにもどのように装い,警察に対し,いつ,誰が,どのように通報するのか(本件では,被害者の遺体の周りには,遺書と思われるメモが置かれていたほか,金融機関からの請求書と思われる郵便物が多数散乱していた),殺害後の事後処理にどのようなことが必要となるのか(bが返り血を浴びることになるのかどうか,被害者の血がbの衣類に付いたとして,bがその処分をどのようにするのか),などのことについては,被告人には分からないことであったのである。このように,近い将来bが実現しようとしている被害者殺害については,被告人にとって,余りにも不確定の要素が多い状況の中で,果たして,被害者殺害を実行したbから,その事後処理等の協力を求められるかもしれないと考えて,その場合には協力しようと思っていたのか,強い疑問を抱かざるを得ず,そこまで考えていなかったのではないかとも考える余地も十分にある。
 
さらに,bについてみると,確かに,bは,被害者殺害後,被告人に対し,軍手等の処分や被害者が死亡しているか確認するよう依頼しているが,死亡確認の依頼に際して,bが「刺してすぐ恐くなって,逃げてきてしまった。被害者が死んだかどうか,確認してこなかった」と述べていることからもうかがえるように,もともとbが被害者殺害の事後処理等を被告人に依頼することを予定していたというよりは、被害者の死亡を確認せずに現場を後にしてしまったことに対応して場当たり的に被告人に依頼したとみることも十分可能であるから,そのような事後処理等を被告人に依頼したことをもって,犯行直前の段階で,被告人から協力を断られたbが,被害者殺害後の事後処理等を被告人に期待していたと断定することができないことは明らかである。もともと,bの内心については,bが真相を語らず,被告人に責任転嫁しようとしているだけに,それを推し量るのは困難というほかない。
 
以上のとおり,犯行直前の協力依頼を被告人が断った際,被告人が,被害者殺害後のbから,その事後処理等について協力を求められ,その場合には協力しようと考え,bにおいても,被害者殺害後の事後処理等について,被告人の協力が得られるものと期待していたとするには,合理的な疑いが残り,本件ではこれらを認めるに足りる証拠はない。 
3 破棄自判と職権調査
 
本件の証拠関係からすると,1審の裁判所が認定した当初の殺人の共同正犯の訴因と異なる内容による殺人の幇助犯については,上記2のとおり,そもそもこれを認めるに足りる証拠がないのであるから,被告人に防御の機会を与えるために,検察官に対して訴因変更を促し,あるいは訴因変更を命じる必要があるとはいえない。そうすると,控訴審としては,訴訟手続の法令違反により1審判決を破棄して被告事件を1審の裁判所に差し戻すことは相当でない。
 
そして,1審判決を破棄しても,被告事件を1審の裁判所に差し戻さない以上,この裁判所で自判することとなるが,当初の訴因である殺人の共同正犯の公訴事実については,被告人の控訴申し立てに伴って法律上控訴審に移審係属するところとなっている。しかし,その殺人の共同正犯の訴因と1審の裁判所が認定した殺人の幇助の訴因とは大小の関係にあって,いわゆる縮小認定であることからすると,1審判決では,大の部分に当たる殺人の共同正犯の訴因については無罪判断があるものとして扱うのが相当であり,この1審判決に対する検察官の控訴の申立てがない以上,その無罪部分(殺人の共同正犯の訴因)について,控訴審であるこの裁判所は,職権による調査を行うことができず,1審判決の無罪判断に従うほかないと解するのが相当である(なお,仮に上記の職権調査ができるとしても,本件の証拠関係からすると,bの検察官調書の信用性には疑問が残るのに対し,被告人の捜査及び公判での供述は全体としてその信用性が高いとした上で,bと被告人の間で,平成6年10月中旬ころに被害者殺害の共謀が成立したものの,犯行前日のbからの被害者殺害のための協力依頼を被告人が断った時点で,その共謀が解消されたとする1審判決の判断は,この裁判所も是認することができるので,無罪の結論は変わらない)。
第3 結論―破棄無罪―
 
よって,刑事訴訟法397条1項,379条により1審判決を破棄し,同法400条ただし書により,この被告事件について更に次のとおり判決する。
 
当初の訴因である殺人の共同正犯の公訴事実については,犯罪の証明がないとする1審判決の判断に従い,刑事訴訟法336条により,被告人に対し無罪の言渡しをすることとして,主文のとおり判決する。
平成20年4月22日
福岡高等裁判所第一刑事部
裁判長裁判官 陶山博生
裁判官中牟田博章及び浅香竜太は,いずれも転任のため署名押印できない。
裁判長裁判官 陶山博生

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