殺人福岡19

殺人福岡19

福岡地方裁判所小倉支部/平成18年(わ)第61号

主文
被告人Aを無期懲役に,被告人Bを懲役5年に処する。
被告人らに対し,未決勾留日数中各470日を,それぞれその刑に算入する。
被告人Aから,福岡地方検察庁小倉支部で保管中の大麻1袋(平成18年領第392号符2-1号)を没収する。

理由
(罪となるべき事実)
第1 被告人Aは,分離前の相被告人Cと共謀の上,
1 Cの夫であるD(当時43歳)《以下,「被害者」という。》を被保険者とし,Cを受取人とする死亡保険金を詐取するため,被害者を殺害しようと企て,殺意をもって,平成17年10月12日午後6時半ころ,北九州市a区b町c丁目d番e号のゲームセンター「E」において,Cが,被害者に対し,睡眠薬であるハルシオンを混入した炭酸飲料水を飲ませ,引き続き,同日午後6時40分ころから午後9時過ぎころまでの間,同区b町c丁目f番g号の飲食店「F」において,Cが午後7時20分ころに合流した被告人Aとともに被害者に飲酒させた上,普通乗用自動車の助手席に同人を乗せ,同日午後10時04分ころ,Cが同車を運転して同区hi丁目j番k号先のl港m泊地岸壁から海中に転落させ,半覚せい状態に陥っていた被害者を同車ごと海中に沈め,よって,そのころ,同所において,同人を溺死させて殺害した。
2 上記被害者を被保険者,Cを受取人とするG生命保険《略》の死亡保険金名下に金員を詐取しようと企て,《略》,平成17年10月21日,《略》死亡保険金の支払を請求し,死亡保険金名下に1500万円を交付させて詐取しようとしたが,支払い可否についての調査中にCらが被害者を殺害したことが発覚して逮捕されたため,その目的を遂げなかった。
3 前同様に,上記被害者を被保険者,Cを受取人とするH生命保険株式会社生命保険《略》の死亡保険金名下に金員を詐取しようと企て,平成17年10月25日《略》死亡保険金の支払, を請求し,死亡保険金名下に1000万円を交付させて詐取しようとしたが,支払査定中にCらが被害者を殺害したことが発覚して逮捕されたため,その目的を遂げなかった。
第2 被告人Aは,みだりに,平成18年1月7日,北九州市n区op丁目q番r号のI車検センターガレージ内に駐車中の普通乗用自動車内において,大麻約1.521グラム(福岡地方検察庁小倉支部平成18年領第392号符2-1号は,その鑑定残量)を所持した。
第3 被告人Bは,Cが被告人Aと共謀の上第1の1ないし3の犯行を行った際,それに先立ち,Cが保険金目的で上記被害者の殺害を企図していることを認識しながら,あえて,平成17年9月30日ころから同年10月9日までの間,Cに対し,携帯電話のメール機能を用いて,「まだ早いと思う海水の温度は気温より約一月遅れで下がってくるからやっぱり12月にならないと下がらないよその頃の時化た日が良いと思うよそれの満潮から引き始めた時が良いと思うよ沖に流されるからね・・」,「それじゃ事故に成らずに完全に殺人で調べが入るぞ一番な疑われるのは貴女だよそれより事故か殺人が解らない方が良いんじゃない」,「話し合いもせず無計画にすると絶対失敗するぜ一度あってはなさないと薬の効き目も確認しとかないと」などのメールを送信し,被害者殺害の時期方法等についてCの相談に乗って忠告,助言し,同人の被害者殺害の意思を支え続けるとともに,同月12日,Cから被害者を同日殺害するとの報告を電話で受けると,Cに「頑張れよ。」と告げて同人を激励し,これら一連の行為によって,被害者殺害にあたるCを精神的に支え,同人の被害者殺害の意思をより強固なものにし,もってCの上記各犯行を心理的に容易ならしめてこれを幇助した。
(証拠の標目)
判示第1の1ないし3及び判示第3の事実
 
第7回及び第8回公判調書中の被告人A,同Bの各供述部分
 
被告人Aの検察官調書(乙27)
 
被告人Bの検察官調書(乙33)
 
第3回,第4回,第5回及び第6回公判調書中の証人Cの各供述部分
 
分離前の相被告人Cの検察官調書抄本(乙9,18)
 
死体検案書謄本(甲1)
 
実況見分調書謄本(甲4,26(不同意部分を除く。))
 
写真撮影報告書謄本(甲15)
 
検証調書謄本(甲25)
 
CとA間の通信状況に関する報告書謄本(不同意部分を除く。)(甲58)
 
CとB間の通信状況に関する報告書謄本(甲59)
 
被疑者携帯電話の送受信メールの精査に関する報告書謄本(甲63)
 
鑑定書謄本(甲79)
判示第1の2及び判示第3の事実
 
Jの警察官調書(甲37)
 
Kの警察官調書(甲40)
判示第1の3及び判示第3の事実
 
Lの警察官調書謄本(甲45)
 
Mの警察官調書謄本(不同意部分を除く。)(甲48)
判示第2の事実
 
第1回,第2回及び第8回公判調書中の被告人Aの各供述部分
 
写真撮影報告書(甲75)
 
任意提出書(甲69),領置調書(甲70)
 
鑑定嘱託書謄本(甲72),鑑定書(甲73)
 
福岡地方検察庁小倉支部で保管中の大麻1袋(平成18年領第392号符2-1号。甲71)
(事実認定の補足説明)
 
検察官の起訴にかかる本件各公訴事実は,別紙公訴事実(略)記載のとおりであり,被告人Bも殺人,詐欺未遂の共同正犯であるとする。これに対し,被告人らの各弁護人は,被告人AとC及び被告人BとCとの間にはそれぞれ共謀はなく,被告人らはいずれも無罪である旨主張し,被告人らもそれぞれこれに沿う供述をしているので,当裁判所の認定した事実について補足して説明する。
第1 前提事実(証拠上明らかな事実)
 
関係各証拠(甲1,3,4,18(不同意部分を除く。以下一部不同意の証拠についても,検察官請求証拠番号のみを略記するが,不同意部分は証拠から除く。),22,23,37,40,45,48,79,公判調書中の証人C供述部分(以下公判調書中の供述部分は,「C供述」のように略記する。),被告人A供述,被告人B供述)によれば,以下の事実が認められる。
1 Cは,平成17年9月20日ころ,保険代理店を営んでいた被告人Aから,同人が取り扱う保険契約に名義を貸してくれないかと頼まれ,被害者から名義を使用することの承諾を得られたことから,同月28日,被害者を契約者及び被保険者,Cを受取人とする,死亡保険金1000万円,災害死亡時5000万円のNの生命保険契約申込書に被害者が署名し(以下,単に「保険契約締結」などという。),その後,不備書類を追完の上,同保険契約は,同年10月7日に成立した。
2 Cは,同月12日午後6時30分ころ,判示第1記載のゲームセンター「E」において,被害者に睡眠薬であるハルシオンを溶かした炭酸飲料水を飲ませ,さらに同日午後6時40分ころから午後9時過ぎころまでの間,判示第1記載の飲食店「F」において,午後7時20分ころに来店し合流した被告人Aといっしょに被害者に飲酒させた上,被害者を自己が運転する普通乗用自動車の助手席に乗せ,同日午後10時04分ころ,判示の北九州市a区mの岸壁から車両ごと海に落下して,被害者を溺死させた。Cは,あらかじめ開けておいた運転席側の窓から車両内より脱出し,岸壁にしがみついているところを散歩中の近隣住民に発見救助された。
3 被害者を被保険者,Cを受取人とする生命保険契約は,上記のNの保険のほか,以下の保険が締結されていた。
・G生命保険2件
 
死亡保険金額 合計500万円 不慮の事故による死亡時合計1500万円
・H生命保険株式会社生命保険
 
死亡保険金額 1000万円
4 Cは,同月21日にGの生命保険の死亡保険金の請求手続を,同月25日にH生命保険株式会社生命保険の死亡保険金の請求手続を行ったが,両保険の担当者が支払について調査をしているうちにCによる殺害が発覚したため,保険金取得には至らなかった。
5 被告人AとCとの通信状況は「CとA間の通信状況に関する報告書」(甲58),Cの検察官調書(乙9,18),被告人BとCとの通信状況は「CとB間の通信状況に関する報告書」(甲59),Cの検察官調書(乙9)のとおりであり,携帯電話のメールの内容についても一部復元がされており(甲63),その内容は,上記各証拠に記載のとおりである。
第2 被告人らの本件への関与について
 
C供述,「CとA間の通信状況に関する報告書」(甲58),「CとB間の通信状況に関する報告書」(甲59),「被疑者携帯電話の送受信メールの精査に関する報告書」(甲63)などの関係各証拠によれば,上記第1のCの行為に被告人両名が関与した状況について,以下のとおりの事実が認められる。時系列に沿って認定事実を記載するが,日付について特にことわりのない限り,全て平成17年中のことである。
1 9月中旬までの状況
・Cは,平成15年10月10日に被害者と婚姻して生活を共にしていたものの,被害者には自分に対する思いやりが足りず,不潔であるなどとして,徐々に被害者に対する不満を募らせ,平成17年夏ころ,白癬をうつされたことをきっかけに嫌悪感を抱くまでになり,平成17年9月当時には,周囲の者に対して,(被害者が)「ぽっくり死んでくれればいいのに。」等と再三愚痴をこぼしていた。
・被告人Aは,9月当時,主に,北九州市内に2店舗のたこ焼き屋を経営するとともに,N及びO自動車共済組合の保険代理店業を営んでいた。Cとは,平成12年ころ,スナックのホステスと客として知り合い,マージャン仲間として交際を続けていたが,平成17年春ころからは情交関係を有していた。被告人Aは,同年8月ころから,ホテルで密会している際等に,Cが被害者の愚痴や「ぽっくり死んでくれればいいのに。」等と言うのを聞いており,被害者に睡眠薬であるハルシオンを飲ませた上で飲酒させ,Cが運転する車の助手席に乗せて車ごと海に落ち,溺死させる方法(以下,「本件方法」ともいう。)や,血管に空気を注入して死に至らせる方法など,被害者の殺害方法を話題にしていた。(A7回109項以下,297項以下,8回138項以下)
・被告人Bは,9月当時,建設業に従事していた。Cとは,平成7年ころにマージャン仲間として交流があったものの,その後疎遠になっていたところ,被告人BがCをマージャンに誘う等の電話を掛けるなどして9月中旬ころから交際が復活していた。被告人Bは,交際復活当初から,Cから被害者の愚痴や「ぽっくり死んでくれればいいのに。」等と言うのを聞いていたが,はじめは,「おまえが選んだだんなやからしょうがないやないか,もう少しがまんせい。」などと,Cを諭すような応対をしていた。(C3回134項以下,B7回182項)
・被告人Aと被告人Bとの間に面識はなく,Cがいずれかの被告人と話をするときに他方の被告人の存在を告げることはなかったので,被告人両名は,本件で逮捕されるまで互いの存在を知らなかった。(C3回210項)
2 名義貸しによる保険契約締結までの状況
・被告人Aからの保険契約締結依頼
 
被告人Aは,北九州市にあるNの保険代理店で結成される「北九州N会」の会員であったが,同会は,平成17年,同年8月度及び9月度の2ヶ月間に年間保険料が合計50万円以上の生命保険契約を締結した代理店等を入賞として旅行に招待するという内容のキャンペーンを主催していた。被告人Aは,同キャンペーンへの入賞を希望しており,9月20日ころ,契約実績を作るため,Cに名義借りを相談したところ,Cから,被害者の名義貸しの提案を受けたので,Cを通じて被害者の承諾が得られたら,その名義を借りて保険契約を締結することとした。(甲18,C6回626項,A7回135項,142項以下)

・その後の被告人Bの関与状況等
ア 被告人Bの協力申し出
 
被告人Bは,Cを車に同乗させてマージャン店に向かっていた際,Cから,被害者の保険契約を締結するかもしれないこと,被害者がぽっくり死んでくれれば保険のお金が入ることを聞くと,真剣な顔つきで,「おれは思うんだけど,まじめに仕事をしていてもお金が貯まるわけじゃない,何か悪いことでもしないと金もうけできないから,何でもするし,することがあるなら何でも手伝うぞ。」とCに言った。(C3回141項,4回390項)

 被告人Bは,Cとは,10月12日までの間にマージャン店にCを車に同乗させて合計2,3回行っているが,その行き帰りに,車の中で,Cと被害者の殺害方法に関する話をした。Cは,被告人Bに対し,既に被告人Aとの会話で話題にあがっていた本件方法などについて話して意見を求め,被告人Bからは,ストーブにほこりを詰めて被害者を一酸化炭素中毒により殺害する方法などが提案されたりした。(C3回290項以下)
イ 岸壁(s,t,m泊地)への同道
 
被告人Bは,夜にマージャン店からCを同乗させて車で帰る途中,「いいところがある。」と述べて,Cを北九州市u区v町所在の岸壁に隣接する路上(以下,「s」という。)に連れて行った。Cは,この場所を,本件方法を実行するのにいい場所として受け取ったが,当該場所は大変暗く,また,車止めを乗り越えなければ海に落ちることができないことから,怖いと思い,被告人Bに対し,この場所では出来ない旨述べると,被告人Bは,苦笑いしながら,そうかと答えた。(C3回392項以下,4回706項以下)
 
また,被告人Bは,別の日にも,夜に上記マージャン店からCを同乗させて車で帰る途中,「いいところがある。」と述べて,Cを北九州市t区w海岸所在のP株式会社t工場南東先所在の岸壁に隣接する空き地(以下,「tの空き地」という。)に連れて行った。被告人Bは,同所に駐車中の車内で,Cに対し,自分が被害者をダンプで轢いてやるから2000万円くれと述べたり,轢くのは血が流されやすい雨や台風の日がいい等と述べたりしたが,Cが,その方法はあまりにむごくてできないと断ると,被告人Bは,苦笑いしながら,「おまえは,まだだんなのことを愛しとるんやないか。」などと答えた。(C3回295項以下,4回542項)
 
被告人Bは,その後,Cから,一度一緒にmを見てほしい旨のメールを受け取ったことから,午後5時ころ,Cと北九州市a区所在のl港m泊地(以下,「m泊地」という。)で落ちあった。m泊地では,Cから,本件方法などを念頭に置いて,海の方を指さしながら,あそこから落ちようと思うんだけどなどと尋ねられ,被告人Bが,あそこだったらいいんじゃないか,階段の所まで泳いでいってそこから上がってくればいいのではないかなどと答えた。また,被告人Bは,そばにいて俺が飛び込んで助けてやると言ったり,車の水圧は車が全部海の中に沈んでしまえば一緒になり,ドアが開くようになるから,それまで頑張って待っていたらきっと助かると言ったりした。(C3回326項以下,405項以下)
ウ 分け前の要求等
 
被告人Bは,上記のとおり,tの空き地においてCにダンプでひき殺してやるから2000万円くれと言い,また,いずれかの機会に,Cが被害者を殺害した場合には,四,五百万円を回してくれ等とも述べた。(C3回588項以下)
 
なお,被告人Bは,Cと会ったいずれかの機会に,被害者を被保険者とする生命保険契約は,新たに締結されるかもしれないもののほか,G生命保険及びH生命保険株式会社の生命保険も締結されている旨を聞いていた。(C3回201項,B8回127項)
3 保険契約締結
・保険契約締結手続の状況
 
被告人Aは,Cから被害者が保険の名義貸しに承諾したことを聞いたので,9月27日夕方ころ,Nの社員であるQに電話をし,被害者名義の保険契約の設計を依頼し,キャンペーンの条件を満たす内容で,被害者を契約者及び被保険者,Cを受取人とする保険内容を決定した。(甲18,C5回986項以下,A7回185項以下)被告人Aは,同月28日午後2時ころ,被害者方に赴き,Cが同席する場で,被害者に保険契約申込書に署名させ,保険契約締結の手続を行った。被告人Aは,その席で被害者に対し,「お礼にちょっと,今度一緒に食事に行きましょうか。」と誘った。(C3回188項,A7回232項)
・保険契約締結後のCの状況
 
Cは,保険契約締結前から被告人Aや被告人Bとの間で,被害者殺害の話をしていたが,当該保険契約の手続が終了したことにより,被害者を殺害すればNの保険金も得られるということが現実的になり,経済的な不安が払拭されたことで,現実に被害者を殺害することを考えるようになった。(C3回83項以下,4回425項以下)
4 その後のメールのやり取り状況
・9月30日
 
被告人Bは,Cから被害者が保険の審査に通らないかもしれないとの話を聞いていたので,9月30日,Cに対し,「旦那が保険の検査で引っかかったんなら再検査の前に他の保険に入ってたほうがいいぞ検査受けるとなかなか入れなくなるよ」とのメールを送信した。これに対して,Cから,「もう入った後だから。災害死亡5000万」との返信を受け,被告人Bは,被害者に保険契約が締結されたこと及びその保険金額を知った。(甲59,63,乙9)
・10月1日
 
被告人Aは,10月1日,Cから,水死は保険金が出るのかなどとメールで尋ねられ,Cに対しメールで「水死は災害です。但し,受取人が被疑者の場合は保険金は出ません」と返信した。そして,。Cから,その趣旨を尋ねるメールを受信したので,さらに,「って言うか,犯人になったらダメって事。」とのメールを送信した。(甲58,63,乙9)

・10月3日
 
被告人Bは,10月3日,Cから,今海に落ちたら死ぬかなどとメールで尋ねられ,Cに対しメールで「この季節なら 海の状態にもよるけど 80%位は 助かるんじゃないかな もう少し 寒くなったら その 逆位の 確率かな・ってとこだろうと 思うんだけど」,「まだ早いと 思う 海水の温度は 気温より 約一月遅れで 下がってくるから やっぱり 12月にならないと 下がらないよ その頃の 時化た日が 良いと 思うよ それの 満潮から 引き始めた時が 良いと思うよ 沖に流されるからね・・」などと返信した。(甲59,63,乙9)
・10月4日
 
被告人Bは,10月4日,Cから,海水の温度についてメールで尋ねられ,Cに対しメールで「たぶん 20度近く 有ると 思うよ」と返信した。さらに,被告人Bは,Cに対し,「まだ 少し 時間があるから 今度逢ったときに ゆっくり 相談しようよ 他言無用だぞ」とのメールを送信した。さらにCからの返信をはさんで,「はいな あんまり 焦るなよ そして そんな 素振りも しないように 頑張ろうぜ」とのメールを送信した。(甲59,63,乙9)
・10月6日
 
被告人Bは,10月6日,Cから,本当に被害者殺害の手伝いをしてくれるのかとメールで尋ねられ,Cに対しメールで「解ってるよ お互いに リスクを 背負うんだから 失敗の 無いように 焦らず きっちり しないとね」と返信した。
 
また,被告人Bは,Cから,まだ海に落ちても死なないよねなどとメールで尋ねられ,Cに対しメールで「まだ 寒くないぞ 落ちても 死なないよ」と返信した。 
続けてCから,走っている車から被害者を落とす方法はどうかとメールで尋ねられ,Cに対しメールで「それじゃ 事故に 成らずに 完全に 殺人で 調べが入るぞ 一番な 疑われるのは 貴女だよ それより 事故か 殺人が 解らない方が 良いんじゃない」と返信した。(甲59,63,乙9,C3回508項以下)
・10月7日
 
被告人Bは,10月7日,Cから,被害者を外に呼び出すため被害者に電話を掛けてほしい旨のメールを受信し,Cに対しメールで「ごめんよ 今仕事が 終わったよ 電話 するの 電話番号は・」と返信した。また,さらにCからの返信をはさんで,「話合いもせず 無計画にすると 絶対 失敗するぜ 一度 あって はなさないと 薬の 効き目も 確認しとかないと」とのメールを送信した。(甲59,63,乙9,C4回157項以下)
5 10月9日
・Cは,被告人Bからの「薬の効き目も確認しとかないと」とのメールを受けて,ハルシオンの効き目を一度試してみないといけないと思ったが,10月9日,被害者に対する殺意が高まり,薬の効き目を試し,その際に機会があれば被害者を殺害しようと考え,具体的な殺害方法などは何も決めていないのに,被告人Bに対し午前6時29分ころに今日会えないかとメールを送信したのを初めに,夜8時過ぎまで頻繁に被告人Bに対してメールを送信しながら,殺害方法を模索検討した。(C3回451項以下)
・被告人Bは,Cから送られてくるメールに対して何かあれば手伝うとの姿勢で応対するとともに,Cが拙速に被害者の殺害行為に出て失敗することのないように諫めたりしていた。その具体的なやり取りの状況は,以下のとおりである。(甲59,63,乙9,C供述)
 
午前6時29分ころ CからBへ 今日会えるか(B7回358項)
 
午前6時37分ころ BからCへ 「もうすぐ 出るところだけど 今日はあまり 忙しくはないけど どうかした・」
 
午前6時38分ころ CからBへ Bさんに何かの協力をしてほしいというような内容(C3回495項)
 
午前6時40分ころ BからCへ 「どうしたらいいん」
 
午前6時45分ころ CからBへ 何時ごろだったら体が空いているかとか,自宅のほうに戻るのは何時ごろなのか(C3回496項)
 
午前6時46分ころ BからCへ 「今日は 現場が 近いから 大丈夫だよ」
 
午前6時47分ころ CからBへ 内容不明
 
午前7時05分ころ CからBへ 内容不明
 
午前10時40分ころ CからBへ 内容不明
 
午前11時36分ころ BからCへ 「どうしたいのか 良く解りません 行き当たりばったりで しても 成功しないぞ もう少し 落ち着いて 計画しないと 焦りすぎ」

 午前11時47分ころ CからBへ 内容不明
 
午後1時57分ころ BからCへ 「連絡はい つでも 取れるよ」
 
午後2時00分ころ CからBへ 内容不明
 
午後2時09分ころ CからBへ 内容不明
 
午後3時21分ころ CからBへ 内容不明
 
午後3時56分ころ BからCへ 「その後 どうすると いまだと 水温 あんまり 低くないよ」
 
午後3時58分ころ CからBへ 内容不明
 
午後4時14分ころ CからBへ 内容不明
 
午後6時10分ころ BからCへ 「いいよ 電話して」
 
午後6時25分ころ CからBへ 内容不明
 
午後7時02分ころ CからBへ 内容不明
 
午後7時18分ころ BからCへ 「今 x 今から tに 戻るよ」
 
午後7時20分ころ CからBへ 内容不明
 
午後7時21分ころ BからCへ 「どうしたらいい」
 
午後7時22分ころ CからBへ 内容不明
 
午後7時27分ころ BからCへ 「どうしても tに 戻らなきゃ成らないから 時間を 決めて」
 
午後7時28分ころ CからBへ 殺害することに対しての協力をしてくれるか(C3回525項,B7回364項)
 
午後7時30分ころ BからCへ 「それは 大丈夫だよ でも どうやるか 決めてないぞ」
 
午後7時30分ころ CからBへ 内容不明
 
午後7時34分ころ CからBへ 内容不明
 
午後8時09分ころ CからBへ 今から被害者殺害を実行する(B7回367項)
・Cは,被告人Bと上記のメールのやりとりをする一方で,被告人Aに対し
ても,殺害方法についてメールで意見を求め,午後2時31分ころから午後5時15分ころまでの間,断続的に被告人Aとメールのやり取りをした。(甲58,63,乙9,C供述)
・Cは,同日夜,被害者に睡眠薬であるハルシオンを温かい飲物に溶かして飲ませた上,北九州市t区内の飲食店に被害者と出かけ,同人に飲酒させた。Cは,帰宅後,眠っている被害者の足を縫い針でつついて薬の効き目を確かめたところ,被害者が目を覚ますなどしたため,被害者が完全に昏睡状態に陥っていないことが分かり,同日に被害者の殺害行為に出るには至らなかった。(C3回527項以下)
6 10月10日
・被告人Bは,10月10日の朝,Cに対し,「昨日は あれから どうしたん・」とのメールを送信した。すると,Cから,同日午前7時25分ころ受信したメールで,Cが被害者殺害に至っていないことを知り,同日昼ころ,Cに対し,「今日の 夜 逢えるかい」とのメールを送信した。しかし,これに対するCからの返信はなかった(甲59,63,乙9,。B7回369項,なおC4回217項以下)
・被告人Aは,同日夜,Cから,昨日被害者を殺害しようとしたが失敗した旨のメールを受信したことから,「やっぱ出来んかったんやね。明日,逢ってください。」とのメールを送信し,Cと翌日会う旨の約束をした。その後,同日午後8時00分ころ,Cから,被害者を殺害するためのいい方法はないかと尋ねる内容のメールを受信したことから,午後8時37分ころ,「って言うか,海の件が正解だと思うけどな。」とのメールを送信した。
(甲58,63,乙9)
7 10月11日
・被告人Bの借金依頼
 
被告人Bは,10月11日午前10時53分ころ,Cに対し,「おはよう 入金が 遅れ て困ってるよ 少しで 良いから 貸してくれ」とのメールを送信した。
また,これに対するCからの返信に続き,同日午前11時00分ころ,Cに対し,「金利が 安ければ 20~30万 借りたいけど 高けりゃ 取りあえず 3,4万も 有ればいいけど」とのメールを送信した。
 
Cは,これを受けて,午前11時03分ころ,被告人Aに対し,どこか金融業者を知らないか,会えないかとのメールを送信した。
 
被告人Aは,上記のCのメールを受信し,午前11時10分ころ,「知ってるよ。今,家だけど,何時頃ならいいと?」とのメールを返信した。これに対し,Cから返信のメールが来たので,被告人Aは,午前11時15分ころ,「4時半に。金利は月15% 保証人は必要です」と,同日Cと会う時間と被告人Aの知る貸金業者に関してのメールを送信した。
 
Cは,上記被告人Aからのメールを受けて,被告人Bに対し,午前11時16分ころ,メールで連絡をしたところ,被告人Bは,午前11時34分ころ,Cに対し,「高すぎだよ 貴女の 近くに 月3バーくらいの 処があるよ 俺は 借りてるから ダメなんよ」とのメールを返信した。さらに被告人Bは,Cに対し,その貸金業者からはtの彼女のお母さんが借りていた,金額は解らないけどお母さんは30万位借りていた等のメールを送信した。(甲58,59,63,乙9)
・被告人AとCのホテルでの謀議
 
Cは,上記被告人Aからのメールを受けて,同日午後4時半ころから同人とホテルで会った。この際,Cは,被告人Aに対し,被害者にハルシオンを試したこと,空気注射を試みようとしたこと及び失敗したこと等について話をした。被告人Aは,Cに対し,事故に見せかけて被害者を殺害するには本件方法が良いと勧めた。Cは,自分が危険を背負うことには抵抗があったものの,被害者の殺害は本件方法によるよりほかないと思った。そして,被告人AとCは,本件方法により被害者の殺害を実行するにあたり,被害者を誘い出す方法として,被害者が保険の名義貸しに協力してくれたことへの謝礼名目で飲食の席を設定することや,飲酒させる店は焼き鳥の店がいいことなどについて話をした。また,少なくともこのときまでに,被告人AとCは,本件方法による実行後に警察等に話す弁解内容は,飲食後,ホテルに行く前に,酔いさましのために海辺に駐車していたら,被害者が急に抱きついたことから車のアクセルとブレーキを踏み間違えて海に転落したというものにすることについても話をしていた。また,被告人Aはこの際,Cに対し,Nの方でいいから半分ちょうだいねなどと,報酬を要求した。(C3回600項以下)
・Cの被告人Aに対する下見依頼等
 
Cは,被告人Aと別れて帰宅した後,被告人Aに対し,同日午後10時23分ころ,「R《注・コンビニエンスストア》に行くって言えば少し出れる。海辺を見て欲しいだけだから。またにする?明日,焼き鳥に誘ってくれる?」とのメールを送信した。被告人Aは,これに対し,同日午後10時58分ころ,「tに行く途中でした。明日,焼き鳥イイよ。」とのメールを返信した。
 
さらに,被告人Aは,Cから,tの海を見て欲しい旨の依頼を受けたことから,tの空き地の下見をし,同日午後11時11分ころ,Cに対し,「今,tの海を見てきました。車止めがあって,乗り越えるのは難しいです。右奥なら車止めはないけど,あそこに行くのは不自然だと思います。」とのメールを送信した。
 
さらにその後,被告人Aは,同日午後11時17分ころ,焼き鳥の誘いの件でメールを受信し,同日午後11時19分ころ,Cに対し,「あなた宛てにしたらいいと? それとも旦那? 番号しらないし」とのメールを送信し,結局Cからメールのやり取りで被害者の携帯電話の番号の連絡を受けた。
 
また,被告人Aは,Cから,海に転落する際の被害者の乗車位置は後ろの座席でもいいと思うかと尋ねるメールを受信したことから,翌日である10月12日午前0時01分ころ,「後ろに座って,どうやって貴女に触るの?後ろに座ってる人とホテル?今,家だから明日。」と返信した。(甲58,63,乙9)
8 10月12日
・被告人AとCとの連絡状況
 
被告人Aは,10月12日午前10時52分ころ,Cに対し,「何時にどうしたらイイの?」と尋ねるメールを送信した。これに対してCから返信があったことから,同日午前11時07分ころ,Cに対し,「何時頃から,どこで飯食べるの?貴女に先に電話した方が自然じゃない?旦那に電話して場所は俺が決めるの?」とのメールを送信した。これに対して同日午前11時12分ころにCから返信されたメールには,被告人Aに,実行後,a区にあるCや被告人Aの行きつけのマージャン店であるSにいて欲しいとの内容もあったことから,被告人Aは,同日午前11時21分ころ,Cに対し,「3時頃貴女に電話して打ち合わせた後に旦那にします。Sに居てって,どのタイミング?」とのメールを送信した。これに対しても,Cからの返信のメールを受信したが,殺害実行後に被告人Aに電話をするような内容が含まれていたことから,被告人Aは,同日午前11時24分ころ,「俺に電話するの?変だよ。 普通,身内でしょ」とのメールを送信した。
 
その後,被告人Aは,前日にCから聞いていた被害者の携帯電話に電話を架けたが,被害者が出なかったことから,同日午後2時56分ころ,Cに電話を架け,被害者が出なかったことなどを報告した。
 
これを受け,Cは,同日午後3時05分ころ,被害者に対し,「今,Aさんから先日話していたお誘いの電話がありました。無事にclear出来たらしい。焼き鳥をご馳走してくれるみたいなんだけどどうしますか。明日は夜勤だし行かない?返事をしないと行けないから連絡下さい。たまには帰りにホテルにでも行きましょうか?」とのメールを送信した。
 
そして,Cは,上記メールを被害者に送信した直後,被告人Aに対し,「今・(メール)を送りました。もしも行かないと言ったらどうしよ。」とのメールを送信した。(甲59,63,乙9,C供述)
・被告人Bに対する本件殺害実行の報告
 
被告人Bは,同日午後3時20分ころ,Cに対し,前日の借金の件で電話をしたが,その電話で,Cから,同日に本件方法で被害者の殺害を実行する旨を伝えられた。被告人Bは,Cに対し,「頑張れよ。」などと言葉をかけた。(C3回669項以下,4回262項以下)
・殺害までの状況
 
Cは,被害者から焼き鳥の誘いに応じるとの返事を受けて,同人と店に向かい,同日午後6時30分ころ,判示第1の1記載のゲームセンターにおいて,500ミリリットルのペットボトル入りの炭酸飲料水にハルシオンを溶かし,被害者に飲ませた。その後,Cと被害者は,判示第1の1記載の飲食店において同日午後6時40分ころから飲食を開始した。被告人Aは,午後7時20分ころ,当時4歳の長男を連れて来店し,Cと被害者に合流した。Cは,被害者がトイレに立った隙に,被告人Aに対し,小さな声で,被害者にハルシオンを飲ませた旨伝え,被告人Aは,これを了解した。被告人Aと被害者は,ビールのほか,互いに差しつ差されつしながら,二人でとっくり3本分の冷酒を飲んだ。(C3回714項)
 
Cは,被告人Aと別れ,同日午後9時32分ころ,被告人Aに対し「今日はありがと。私の無事と成功を祈ってね」とのメールを送信した。
 
また,Cは,同日午後9時48分ころ,被告人Bに対して,メールアドレスだけでメールをやりとりした相手が誰なのか分かるかどうかをメールで尋ねた。被告人Bが,分かると返信したのを受けて,午後10時01分ころ,被告人Bに対し,「この時間のメールは,麻雀の話しにしてね。」とのメールを送信した。
 
その後の同日午後10時4分ころ,Cは,判示第1の1記載のとおり,被害者を同乗させた車ごと海に落下して殺害行為を実行し,被害者を溺死させた。
9 殺害後の状況
・Cは,10月13日,被告人Aに電話を架け,本件について報告した。
 
Cは,同月17日ころ,G及びH生命保険株式会社の保険金請求のための用紙をそれぞれ入手した。そして,同月21日にG生命保険の死亡保険金の請求手続を,同月25日にH生命保険株式会社生命保険の死亡保険金の請求手続を行った。
・被告人Bは,10月24日ころ,犯行前にCが使用していた携帯電話に電話を架けてみたが,同携帯電話は水没するなどしていたため,Cと連絡をとることはできなかった。
第3 各当事者の主張についての検討
 
以上認定の関与状況について被告人らはこれを争うところであり,以下に検討する。
1 被告人Aについて
・被告人Aの弁護人は,被告人Aは、10月11日午後4時半頃からCとホテルで会った際には被害者の殺害について相談などしていない,Cとの間でやりとりされたメール等は,全て,Cが被害者を殺害したい旨抽象的,断片的に話すのに対し,終始否定的受け流しの回答をしていただけであって,Cが真実被害者に対して殺意を持っていることなど知らなかったものであると主張し,被告人Aも公判廷においてこれに沿う供述をしている。
 
しかしながら,Cは,10月11日に被告人Aとホテルで会った際,本件方法により被害者を殺害することについて具体的に相談をし,それに続いて同日夜から翌12日にかけても,メールのやりとり等において,翌12日に殺害を実行することや被害者を誘い出す方法等について具体的に相談をしたと供述する。このCの供述は,被告人AとCとの間の客観的な通信内容によく合致し,かつ,通信内容を自然かつ合理的に,よどみなく説明するものであって,その信用性は高い。確かに,被告人Aのメールは,Cを情交に誘っていると思われるもの以外は,Cからのメールでの問いかけに対して回答しているものともいえるが,10月1日の「水死は災害です。但し,受取人が被疑者の場合は保険金は出ません。」,「って言うか,犯人になったらダメって事。」,10月10日「やっぱ出来んかったんやね。」,「って言うか,海の件が正解だと思うけどな。」などのメールは保険金目的での殺害を想像させる上に,さらに10月11日にCとホテルで会った後の「今,tの海を見てきました。車止めがあって,乗り越えるのは難しいです。右奥なら車止めはないけど,あそこに行くのは不自然だと思います。」とのメール,10月12日の「俺に電話するの?変だよ。 普通,身内でしょ」とのメールは,いずれも被告人AがCと本件方法を相談の上,Cが実行に及ぶことを前提とする内容であり,とくに10月11日の「車止めがあって,乗り越えるのは難しい」というのは,まさに本件の車ごと海に落下することを前提にした内容であると理解されるし,10月12日の「俺に電話するの?変だよ。 普通,身内でしょ」とのメールは,車ごと海に落下して被害者を殺害した後,連絡するのは身内でなければ不自然であるという内容と理解される。加えて,Cは,10月12日夜,判示の飲食店で被害者や被告人Aと飲食して被告人Aと別れた後,「今日はありがと。私の無事と成功を祈ってね」とのメールを被告人Aに送信しており,このCのメールは,Cが本件方法によって被害者を殺害することを,被告人Aが,当然承知していることを前提としているものとしか理解できない。 
 
したがって,被告人Aの上記供述は不自然であって信用できず,被告人Aの弁護人の主張は採用できない。
・被告人Aの弁護人は,被告人Aは,10月12日午後7時20分ころから9時過ぎまでの間にC及び被害者と飲食した際に,Cから,被害者にハルシオンを飲ませたなどという話は聞いていないと主張し,被告人Aも公判廷においてこれに沿う供述をしている。
 
しかしながら,Cは,10月12日,判示の飲食店において被告人Aもともに飲食していた際,被害者がトイレに立った隙に,被告人Aに対し,被害者にハルシオンを飲ませた旨伝えたと一貫して供述しているところ,ハルシオンを飲ませた旨を聞いた被告人Aの反応についてのC供述の内容には変遷が見られるものの,被告人AとCは,被害者に睡眠薬を飲ませた上飲酒させて,車ごと海に沈めることを相談の上,その犯行のために同席して飲酒しているのであるから,Cにおいて,被告人Aに対し,上記のとおり伝えることは自然であって,Cの被害者にハルシオンを飲ませた旨被告人Aに告げたとの供述は信用でき,これと相反する被告人Aの供述は信用できない。
・被告人Aの弁護人は,被告人AはCに対して報酬を要求した事実はないと主張し,被告人Aもこれに沿う供述をする。
 
しかしながら,Cは,公判廷において,殺害の実行の前後にわたり,被告人Aから,「Nの方でいいから半分ちょうだいね。」とか,「ちゃんと半分ちょうだいよ。」などと言われていたと一貫して供述しているところ,被告人Aにとって被害者を殺害する動機は,保険金取得目的以外にうかがえず,その点からしても,Cの供述は信用できると考えられる上,Cは,被告人Aから「半分ちょうだいね」などと言われた際の状況として,被告人Aが,被害者が亡くなったときには,保険のお金が入ったり,退職金や家が自分のものになったり,年金も6割くらい入っていいね,あとは自分のお小遣い稼ぎ程度の仕事があれば悠々自適じゃんみたいなことを言っていた旨もあわせて供述し,具体性に富むものであること,反対尋問に対しても,半分ちょうだいねというふうに言われていたということ自体は一貫していることなどからすると,この点からもCの供述が信用できる。
・なお,検察官は,被告人Aは,被害者の名義貸しによる保険契約締結の手続をしたのはキャンペーンに入賞する目的ではなく,当初から被害者を保険金目的で殺害することをも企図していたと主張する。
 
しかしながら,これを裏付ける証拠は乏しい上,Qの検察官調書(甲18)によれば,Qが被告人Aと電話で会話しながら本件保険契約の設計を行い,その保険内容が定まるまでには,被告人AがQがパソコンを用いて試算した額について「高いなー。それは無理。」と述べたり,キャンペーンに入賞できない試算結果について,各種特約を付けてさらに試算するよう依頼したりしている経緯が認められ,この経緯からは,キャンペーンに入賞でき,かつ被告人Aが負担する保険料ができるだけ安くなる保険契約の設計を目指したものとみるのも自然である。被告人Aは,本件保険契約のほかにも,担当した多くの契約に災害特約や傷害特約を付しており(弁86),今回これらの特約を付していること自体は不自然とはいえないこと,被告人Aは,当初Cに名義を借りようと思っていた旨供述しており,その供述も一応合理的,具体的であながち否定できないことからすると,被害者の保険金殺人を企図して保険契約締結の手続がなされたものというには疑いが残る。
2 被告人Bについて
・被告人Bの弁護人らは,被告人Bは,Cの被害者を殺害する話を本気とは考えておらず,s,tの空き地及びm泊地に行った際の被害者殺害に関するやりとりはCが被害者殺害を決意する以前のことであって冗談話でしかなかったし,Cが被害者殺害を決意した後には,被告人BはCと会っていないから,被告人BはCが殺害に本気になったことなど知らず,Cが殺害決意後に被告人Bに送信したメールも冗談の延長にすぎないとしか理解していなかったものである旨主張し,被告人Bもこれに沿う供述をする。
 
しかし,上記認定事実によれば,Cが被害者殺害の意思を固める以前のことであるとはいえ,被告人Bは,「おれは思うんだけど,まじめに仕事をしていてもお金が貯まるわけじゃない,何か悪いことでもしないと金もうけできないから,何でもするし,することがあるなら手伝うぞ。」などとCに申し出た上,Cと被害者の殺害方法について話し,被害者を海に落として殺害することを念頭にCとs,tの空き地,m泊地に赴いたこと(第2の2・)を踏まえ,10月3日にCと海に落ちたら死ぬかと海水の温度などについてのメールをやり取りし,10月4日には「他言無用だぞ」とか「そんな素振りもしないように頑張ろうぜ」,10月6日には「お互いにリスクを背負うんだから失敗のないように焦らずきっちりしないとね」,「それじゃ事故に成らずに完全に殺人で調べが入るぞ一番な疑われるのは貴女だよそれより事故か殺人が解らない方が良いんじゃない」,10月7日には「話合いもせずに無計画にすると失敗するぜ」とのメールを送り(第2の4),さらに10月9日にはCと頻繁にメールのやり取りをして,殺害を実行しようと考えその協力を依頼してきていると想像されるメールに受け答えているのであって(第2の5・),これらの被告人BとCとの間の通信状況及びそのメール本文の内容は,被告人Bにおいて,Cが被害者殺害を本気で考えているものと当然に認識していることを優に推認させるものである。
 
被告人Bは,上記のメールなどについて,Cの歓心を得るためで本気ではなかった,殺人の計画を立てていると空想してやり取りしていた旨供述するが,メールの内容は,具体的で現実性に富むものであり,被告人Bの上記供述は,メールの内容に照らして不自然で信用できない。
・被告人Bの弁護人らは,被告人Bは,同人が10月12日午後3時20分ころにCに架けた電話において,Cから同日殺害を実行する旨を聞いていないし,その際被告人BがCに対して「頑張れよ。」などと言った事実もない旨主張し,被告人Bもこれに沿う供述をする。
 
しかしながら,Cは,上記電話の際,被告人Bに対して,同日本件方法により実行することを告げたこと及びその際「頑張れよ。」とCを応援するような言葉をかけられた旨供述しているところ,確かに,C供述は,本件方法により実行することを告げた具体的文言について,詳細に告げたのか,簡略に告げたのかという点で供述内容が変遷していると見られるが,その日に本件方法で実行することを告げたという点では一貫しているとともに,「頑張れよ。」などと応援するような言葉をかけられた点についても,一貫している。それまで被告人BとCとが被害者殺害に関してメールをやりとりしていた関係にあった事実に照らせば,まさに被害者殺害の実行が具体化しようというときに被告人Bから電話が架かってくれば,Cとしては実行する旨を告げるというのは自然な流れであり,さらにそれを告げられた被告人Bの応対としても,応援するような文言を述べるというのは自然で,上記のCの供述は信用できる。
・なお検察官は,被告人Bが,Cをs,tの空き地及びm泊地に連れて行き,tの空き地においてCに2000万円の報酬を要求したのは,保険契約が締結されCが被害者殺害の意思を固めた後のことであるとする。
 
これについて,Cはそのような供述もしているが,Cはその時期について明確に記憶しているわけではないし,他方,被告人Bの主任弁護人による反対尋問に答えて,9月30日から10月12日までの間,10月1日を除いては被告人Bとは会っていない旨供述している上(C4回20項以下),被告人Bは,m泊地にCと行ったのは,通話履歴などから9月26日であると供述し,その根拠について具体的に説明しており,かつ,その説明は被告人BとCとの通話記録などとも矛盾しない。
そして,10月1日についても,Cの供述等から疑いを容れない程度に両名が直接会ったとは認め難いから,9月30日以降Cと会っていないとの被告人Bの供述を排斥できず,被告人BがCを上記殺害候補地に連れて行き,報酬要求をしたのは,Cが被害者の殺害を意思を固めた後であったとは認められない。
第4 被告人らの罪責について
 
被告人両名の罪責について上記認定事実を前提に検討を加える。
1 被告人Aについて
 
上記認定事実からすると,被告人Aは,Cに対し,「Nの方でいいから半分ちょうだいね。」などと述べて,Nから支払われる合計5000万円の保険金の半額を自分に回すよう要求し,本件犯行が成功すれば被告人Aも多額の金銭を利得できる状況にあり,被告人Aは,10月11日にCとホテルで会って,本件方法により被害者を殺害することについて具体的な話をし,さらに同日夜,Cの依頼に応じ,「明日,焼き鳥イイよ。」などと翌日の殺害実行を承諾するメールを送信して,実行日を10月12日と決定し,Cから依頼されたとおり,t港の下見に赴き,「今,tの海を見てきました。車止めがあって,乗り越えるのは難しいです。右奥なら車止めはないけど,あそこに行くのは不自然だと思います。」とメールを送信して,最終的な殺害場所選定のための情報を提供し,実行に際して被害者を自動車の後部座席に座らせるのはどうかとのCの問いに対しても,「後ろに座って,どうやって貴女に触るの?後ろに座ってる人とホテル?」とメールを送信して,被害者を乗車させる位置など,実行行為の詳細な態様についても意見し,また,被害者を食事に誘う段取りについても,メールで打ち合せている。以上の事情からは,被告人Aは,Cと,被害者の殺害とその後の保険金詐欺という一連の犯行が成功するように,殺害の方法,殺害の実行日,殺害場所,被害者を誘い出す段取りなどの詳細についてそれぞれ謀議を遂げ,Cとの間で本件犯行を行うについて十分な意思疎通が行われているということができる。
 
さらに被告人Aは,Cが被害者と車ごと海中に落下する直前の飲酒の席に同席し,Cから被害者にハルシオンを事前に飲ませたことを聞いた上で被害者とともに飲酒しているところ,被告人A及びCが謀議によって予定した殺害方法は,被害者に睡眠薬を溶かした飲料を飲ませた上で飲酒させ,半覚せい状態に陥らせた被害者を車に乗せて車ごと海中に沈めて溺死させるというものであるから,被害者に飲酒させる行為は,殺人の実行行為そのものではないとはいえ,実行行為に密接する必要不可欠な行為であり,被告人Aはそれを共同している。
 
そうすると,被告人Aは,Cと本件保険金殺人及び詐欺についての謀議を遂げた上,自らもCとともに実行行為の前提となる必要不可欠な行為を分担共同し,死亡保険金の分配を受ける予定の下に,犯罪を実行したと評価できるから,共謀共同正犯としての罪責を免れない。
2 被告人Bについて
・共謀共同正犯の成否
 
上記認定によれば,被告人Bは,Cに金策を依頼するほど自身の経済状況が逼迫した中にあって,Cに対して,2000万円くれとか,四,五百万回してくれなどと述べるなど,Cによる保険金殺人及び詐欺の犯行の成功を望み,その分け前にあずかりたいと考え,Cが殺害の意思を固める前とはいえ,自ら加担を申し出,Cを殺害候補地の下見に連れて行ったりし,保険契約締結後はメールでCに被害者殺害についての忠告,助言をするなどし,さらにCに薬の効果を確認するように助言してその報告を受け,Cが本件方法による殺害を予定したことの報告を受けて,Cを激励している。
 
被告人Bの上記行為は,Cが本件保険金殺人及び詐欺の実行を決意し,また,殺害方法を選択するにあたって精神的に助勢寄与するものであったことは認められるものの,10月11日にその具体的内容が策定された本件実行行為については直接の関与を認めることはできない。本件の実行行為について,被告人A及びCは10月11日以降に具体的に謀議していたが,被告人Bは,これに全く関わっておらず,また,この謀議により何かの行為を分担させられたわけでもない。
 
被告人BとCは,旧知のマージャン仲間ではあるが,本件の約1月前の平成17年9月中旬ころに久々に交流を復活させたもので,両者の間に,主従関係や親密な関係もない。また,被告人Bは,被告人Aの存在自体を知らなかった。
 
しかも,Cが,10月12日に本件方法により殺害を実行することについて被告人Bに報告したのは,被告人Bの金策の件で被告人Bから電話がかかってきたからであり,Cにおいて,積極的に被告人Bに報告しようという姿勢はみられず,仮に被告人Bから電話がかかってこなければ同人に連絡しないままに実行行為に及んだ可能性すらうかがわれるのであって,Cにおいても,本件実行にあたり被告人Bの行為を利用する意思があったとは認められない。
 
結局,上記事情のもとにおいては,被告人Bについては,本件の実行行為として共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し,各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議を遂げ,よって犯罪を実行した場合と評価するには足りないから,被告人Bに正犯の罪責を負わせることはできない。
・幇助犯の成否
 
もっとも,被告人Bは,Cが被害者殺害の意思を固める前にも,Cを被害者の殺害候補地に連れて行ったり,俺がトラックで轢いてやるなどと述べて実行行為を担当することさえ厭わない姿勢を見せたりして,被害者殺害に関するCからの信頼を得ていたところであるが,これを踏まえ,Cが保険金殺人を実行する意思を固めた以降には,Cからの質問に答えるメールを送信し,本件方法を含め,被害者を海で溺死させる方法を検討していたCの相談相手になり,また,メールで,被害者殺害に向けて殺意が高まっているCを勇気づけたり諫めたりした上,10月9日,Cが被害者の殺害を試みようとした際には,頻繁にメールでやりとりをして,Cに対する協力姿勢を示したものである。Cの信頼を得ていた被告人Bが,こうした一連のメールを送信して,Cの相談相手になり,協力姿勢を示すことは,Cの被害者に対する殺意を支えこれをより強固なものとするのに十分なものであり,Cの本件殺害の実行行為を心理的に容易にしたものといえる。
 
また,被告人Bは,10月12日午後3時20分ころ,Cから電話で本件殺害行為に及ぶ予定であることを聞いた際,Cに対し,「頑張れよ。」などと述べているが,これも,それまでにCから信頼を得ている被告人Bからの激励の言葉であるが故に,Cによる本件実行行為を精神的に後押しし心理的に容易にしたものといえる。
 
さらに,被告人Bは,Cが被害者殺害及び保険金詐欺の行為に出ることを認識,認容した上で上記一連のメールを送信したり,「頑張れよ。」と伝えたりしているものであるから,被告人Bには,Cの犯行を容易にしてこれを幇助する意思も優に認めることができる。
 
したがって,被告人Bの行為は,本件について,Cの実行行為を容易たらしめたものということができるから,幇助犯の罪責を負うものと判断した。幇助は,Cの保険金殺人の実行意思を前提とするから,幇助行為に該当するのは,以下の行為である。
ア 被告人BがCに対し,以下に掲げる一連のメールを送信することによって忠告,助言し,Cの相談相手あるいは協力者たる姿勢を示してCによる保険金殺人の実行意思を精神的に支え,その意思を強固にした行為
・10月3日午後3時37分ころの「この季節なら 海の状態にもよるけど 80%位は 助かるんじゃないかな もう少し 寒くなったら その 逆位の 確率かな・ってとこだろうと 思うんだけど」
・同日午後4時43分ころの「まだ早いと 思う 海水の温度は 気温より 約一月遅れで 下がってくるから やっぱり 12月にならないと 下がらないよ その頃の 時化た日が 良いと 思うよ それの満潮から 引き始めた時が 良いと思うよ 沖に流されるからね・・」
・10月4日午後4時04分ころの「たぶん 20度近く 有ると 思うよ」
・同日午後10時36分ころの「まだ 少し 時間があるから 今度逢ったときに ゆっくり 相談しようよ 他言無用だぞ」
・同日午後10時42分ころの「はいな あんまり 焦るなよ そして そんな 素振りも しないように 頑張ろうぜ」
・10月6日午後4時55分ころの「解ってるよ お互いに リスクを 背負うんだから 失敗の 無いように 焦らず きっちり しないとね」
・同日午後21時58分ころの「まだ 寒くないぞ 落ちても 死なないよ」
・同日午後10時07分ころの「それじゃ 事故に 成らずに 完全に 殺人で 調べが入るぞ 一番な 疑われるのは 貴女だよ それより 事故か 殺人が 解らない方が 良いんじゃない」
・10月7日午後9時00分ころの「ごめんよ 今仕事が 終わったよ 電話 するの 電話番号は・」
・同日午後9時05分ころの「話合いもせず 無計画にすると 絶対 失敗するぜ 一度 あって はなさないと 薬の 効き目も 確認しとかないと」
・10月9日午前6時37分ころの「もうすぐ 出るところだけど 今日は あまり 忙しくはないけど どうかした・」
・同日午前6時40分ころの「どうしたらいいん」
・同日午前6時46分ころの「今日は 現場が 近いから 大丈夫だよ」
・同日午前11時36分ころの「どうしたいのか 良く解りません 行き当たりばったりで しても 成功しないぞ もう少し 落ち着いて 計画しないと 焦りすぎ」
・同日午後1時57分ころの「連絡は いつでも 取れるよ」
・同日午後3時56分ころの「その後 どうすると いまだと 水温 あんまり 低くないよ」
・同日午後6時10分ころの「いいよ 電話して」
・同日午後7時18分ころの「今 x 今から tに 戻るよ」
・同日午後7時21分ころの「どうしたらいい」
・同日午後7時27分ころの「どうしても tに 戻らなきゃ成らないから 時間を 決めて」
・同日午後7時30分ころの「それ は大丈夫だよ でも どうやるか 決めてないぞ」

イ 平成17年10月12日午後3時20分ころ、Cから電話で本件実行行為に及ぶことを聞いた際に,Cに対し,「頑張れよ。」などと告げて激励した行為
3 結論
 
以上のとおりであって,被告人Aについては,本件殺人及び詐欺未遂の共謀共同正犯が成立し,被告人Bについては,共謀共同正犯は成立しないが,殺人及び詐欺未遂の幇助犯が成立する。
(法令の適用)
第1 被告人Aについて
 
被告人Aの判示第1の1の所為は刑法60条,199条に,判示第1の2及び3の各所為はいずれも同法60条,250条,246条1項に,判示第2の所為は大麻取締法24条の2第1項にそれぞれ該当するところ,判示第1の1の罪について所定刑中無期懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるが,併合罪のうちの1つの罪について無期懲役刑により処断すべき場合であるから,同法46条2項により他の刑を科さないで,被告人Aを無期懲役に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中470日をその刑に算入し,福岡地方検察庁小倉支部で保管中の大麻1袋(平成18年領第392号符2-1号)は,判示第2の罪に係る大麻で犯人の所持するものであるから,大麻取締法24条の5第1項本文によりこれを没収し,訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人Aに負担させないこととする。 
第2 被告人Bについて
 
被告人Bの判示所為のうち,殺人を幇助した点については刑法62条1項,199条に,各詐欺未遂を幇助した点についてはそれぞれ同法62条1項,250条,246条1項に該当するが,これは1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により1罪として最も重い殺人幇助罪の刑で処断することとし,所定刑中有期懲役刑を選択し,判示の罪は従犯であるから同法63条,68条3号により法律上の減軽をした刑期の範囲内で,被告人Bを懲役5年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中470日をその刑に算入することとし,訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人Bに負担させないこととする。
(量刑の理由)
 
本件は,被告人Aが,被害者の妻と共謀の上,保険金目的で被害者を殺害して保険金を請求したという殺人と2件の詐欺未遂,被告人Bが,その実行行為に及ぶ被害者の妻を幇助したという殺人幇助及び詐欺未遂幇助と,被告人Aの大麻所持による大麻取締法違反の事案である。
第1 被告人Aについて
 
被告人Aは,情交関係にあったCが,その夫である被害者に対して嫌悪感を募らせ,殺意まで抱くようになったことに乗じ,被害者を殺害して保険金を得ることについてCと共謀を遂げ,本件犯行に及んだものである。被告人A自身は,被害者と特段の交流もなく,保険金を得る目的のほかことさら被害者を殺害する動機は考え難いのであって,利欲的で自己中心的な保険金殺人という犯行に酌量の余地はない。
また,被告人Aは,自身は表だった行為に出ることなく,Cが身の危険を冒して殺人の実行行為に及び,保険金の請求を行うという犯行を計画する中,本件殺害方法をとるようCに促して,被害者を死に至らしめ,かつ,保険金を得ようと目論んだものであり,狡猾で計画的である。さらに,本件殺害方法は,保険の名義貸しへの謝礼と称して飲食の席に被害者を誘い出し,何も知らずに楽しいひとときを過ごす被害者を突如として海に沈めて溺死させるという残酷なものである。実際に被告人Aは,情を知らない被害者と何食わぬ顔で談笑するなどしながら酒を酌み交したものであって,冷酷非情であるといわざるを得ない。被害者は,被告人Aらと楽しく食事をとった後,Cの運転する自動車に乗車していたところ,突然車ごと海に沈められ,全く事情のわからないまま苦しみながら死亡したものであって,死の直前の絶望と無念さは察するに余りある。結果は甚大であり,遺族は被告人らの極刑を希望するなど,その処罰感情は峻烈である。
 
確かに本件の実行犯はCであるが,被告人Aは,本件方法についてCの迷いや疑問に対して冷静な助言を与え,自らも,殺害に先立ってCと共に被害者に飲酒させるなど,その果たした役割は重要であった上,被告人Aには保険金獲得という利欲目的のほか本件犯行に及んだ動機が見当たらないことからすると,その責任は極めて重く,実行犯のCと変わるところはない。
 
また,大麻取締法違反の点に関してみても,知人から頼まれて入手したものを車内に放置していたものであるというが,違法な薬物である大麻に関わっていること自体,被告人Aの規範意識の低さを示しているといえる。
 
そうすると,詐欺2件については未遂に終わっていること,本件が報道され,また,妻と離婚して家族を失うなど,相応の社会的制裁を受けていること,大麻取締法違反の罪についてはその罪を認めていること,被告人Aが服役することによって,被告人Aの実子らに相当な精神的苦痛を生じさせることが予想されること等被告人Aにとって酌むべき事情を考慮しても,被告人Aの刑事責任は極めて重く,無期懲役刑に処することはやむを得ないものと判断した。
第2 被告人Bについて
 
被告人Bは,多額の負債を抱え,日々の手元資金にも不自由して,経済的に逼迫していたところ,平成17年9月に交際が復活したCから,同人が激しく嫌悪感を抱き,ぽっくり死んでくれればいいのにと言っていた夫である被害者について,保険契約が締結されるかもしれない旨聞くや,利欲目的からCに対して犯行の加担を申し出,本件保険金殺人及び詐欺について判示の幇助に及んだものである。自らの利欲のため,被害者の殺人を幇助しており,極めて短絡的,自己中心的である。被告人Bは,自ら実行行為に出ることすら厭わないという姿勢を見せ,Cが被害者の殺害意思を固めた後にはCに忠告,助言のメールを送信するなどして,Cを精神的に支えたものであるが,Cにとっては,被告人Bが存在する影響は小さくなく,被告人Bの幇助行為が,実際にCを精神的に支え,その実行行為を容易たらしめたといえる。結果は被害者の死亡という悲惨なものであり,遺族は,被告人Bに対しても極刑を望み,その処罰感情は峻烈である。
 
したがって,被告人Bの刑事責任は,相当に重い。
 
もっとも,本件殺人及び詐欺の具体的な実行行為への関与の度合いが薄く,幇助にとどまることから,被告人Bを主文の刑に処することが相当である。
(求刑-被告人Aにつき無期懲役,大麻の没収,被告人Bにつき懲役15年)
平成19年10月10日
福岡地方裁判所小倉支部第2刑事部
裁判長裁判官 田口直樹 裁判官 野路正典 裁判官 諸岡亜衣子

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