傷害福岡2

傷害福岡2

福岡地方裁判所小倉支部/平成12年(わ)第1200号等

主文
脅迫の事実について被告人を懲役一〇月に処する。
未決勾留日数中一五〇日をその刑に算入する。
平成一三年二月二七日付起訴にかかる傷害の事実について、被告人は無罪

理由
(罪となるべき事実)
 
被告人は、平成一二年一一月三〇日午前九時一六分ころ、福岡県○○郡××町△△○○番地の被告人方から、同県○○郡××町△△△△××番地所在の○○町役場に電話をかけ、
第1 同町総務課町長書T尾I代(当時四八歳)に対し、「俺を無視しとる。今から行って叩き切るぞ。そこで待っちょけ。」などと申し向け、もって、同人の身体等に危害を加えるような気勢を示して同人を脅迫し、
第2 同町長S石H夫(当時六〇歳)に対し、「何でM組に仕事をさせるんか。あんたは、同和のS藤会長とか、M尾会長に脅されて、そんなことばかりしよるんな。俺は、T川の方の者も知っとるし、Y組の者も知っとる。今から来るので会ってくれ。生コンで固めてやるぞ。」などと申し向け、もって、同人の身体等に危害を加えるような気勢を示して同人を脅迫したものである。
(証拠の標目)
 
括弧内の甲、乙を付した数字は、証拠等関係カード記載の検察官請求番号を示す。判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
二 被告人の検察官(乙六、七)及び
司法警察員(乙二~五)に対する各供述調書
三 司法警察員の捜査報告書(甲四)
四 司法巡査作成の現場確認並びに写真撮影報告書(甲五)
判示第一の事実について
一 T尾I代の検察官に対する供述調書(甲一)
判示第二の事実について
一 S石H夫の検察官(甲三)及び司法巡査(甲二)に対する各供述調書
(累犯前科)
 
被告人は、平成七年一二月七日福岡地方裁判所行橋支部で道路交通法違反罪により懲役六月に処せられ、平成八年四月一七日その刑の執行を受け終わったものであって、この事実は検察官事務官作成の前科調書(乙一〇)及び調書判決謄本(乙一四)によってこれを認める。
(法令の適用)
罰条 判示各所為はいずれも刑法二二二条一項に該当
刑種の選択 各罪につき懲役刑を選択
累犯加重 各罪につき刑法五六条一項、五七条
併合罪の処理 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)
未決勾留の刑算入 刑法二一条
訴訟費用刑 事訴訟法一八一条一項ただし書(負担させない。)
(一部無罪の理由)
 
本件公訴事実は、「被告人は、平成一二年六月一三日午後七時五〇分ころ、福岡県○○郡××町△△△△××××番地Y鳴S一方において、同人(当五二年)に対し、その右手甲を足で踏みつけるなどの暴力を加え、よって、同人に加療約八日間を要する右手打撲の傷害を負わせたものである。」というものである。
 
証人Y鳴S一及び被告人の当公判廷における各供述その他関係証拠によると、公訴事実記載の日時場所において、被告人が左足で、Y鳴S一(以下「被害者」という。)の右手甲を、布団の上から踏みつけ、これにより同人が加療約八日間を要する右手打撲の傷害を負ったことが明らかである。しかし、被告人は、当公判廷で、被害者の手が布団の中にあることを知らず、その手を踏むことの認識がなかった旨供述し、被告人及び前記Y鳴の供述によると、その時被害者は、体の肩より下をこたつに入れて寝ている姿勢であり、右手もこたつの布団の中にあったこと、被告人は、山林の取引に関して苦情を言うため被害者方を訪れ、そのこたつのそばで文句を言った後、右足をこたつの上に上げ、左足を被害者の右手がある上の布団を踏んだ状態で、同人から「おれの手踏んじょるじゃねえか。」言われたがそのまま、同人の頭部を手挙で殴打したり、シャツをつかんだりしたことが認められ、この事実経過に照らすと、被告人は、被害者につかみかかるためこたつの上などに立とうとした際、布団の下に同人の手があることを認識せず、その上に左足を乗せたことしても、不自然ではなく、被告人が勢いよく被害者に向かって行ったとすれば、右足より下にあってより体重のかかる左足で、強く布団を踏むことも十分考えられるから、被害者の右手甲に相当程度の有形力が加わったと思われる傷害が生じていたとしても、被告人が故意に被害者の手の上の布団を踏んだと推認することはできない。なお、被告人は、捜査段階において、警察官や検察官に対し、「左足でY鳴の右手を思い切り踏みつけました。」などと供述しているが、被害者の右手の上に布団があったことに言及していない点で不自然である上、被害者がこたつの横に寝ていたと事実に反する供述をしており、その内容自体から信用性に疑問があり、更に、被告人が任意で取調べを受けていた際、警察官から、逮捕することをほのめかしながら、けんか両成敗などと言われたため警察官の誘導に従った供述をし,自分にも落ち度があったので事実と違う供述を記載した各調書に署名したとの弁解も排斥できない。したがって、被告人の捜査官に対する供述は信用できず、被告人が故意に被害者の右手甲を踏みつけたと認定するには合理的疑問が残る。
 
なお、被告人が被害者の右手甲を踏みつけた点に過失があれば、過失傷害の事実を認めることができるが、検察官から過失の内容につき主張及び立証がなされないので、過失傷害の事実を認めることはできない。 
 
したがって、本件傷害の訴因については、刑事訴訟法三三六条後段により無罪の言い渡しをすべきものである。

平成一三年六月二六日
福岡地方裁判所小倉支部第二刑事部
裁判官 大泉一夫

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